警備サービス大手の綜合警備保障は2008年初めから,KDDIの携帯電話を利用した「隊員指令システム」の全国展開を始めた。導入台数は約2500 台。警備隊員が持つ携帯電話のGPS機能を使い,位置をセンター側で常時把握することで,現場に急行する隊員を自動選択するシステムを構築した。新システムによって,同社の警備サービスの利用者宅で警報が鳴ってから実際に隊員が現場に駆けつけるまでの時間を,平均して約2分30秒短縮することに成功した。

 このほか携帯電話とカーナビゲーション・システムをBluetoothで連携させて,通信モジュール内蔵カーナビを撤廃。携帯電話に一本化することで,通信コストを削減した。

現場への到達時間を短縮したい

写真1●綜合警備保障 開発技術部の板橋秀之課長代理(左)と田中智章氏(右)
写真1●綜合警備保障 開発技術部の板橋秀之課長代理(左)と田中智章氏(右)

 綜合警備保障がシステムの見直しを始めたのは2004年ころ。「警報を発した利用者宅に1分,1秒でも速く到達できるように,システム面の体制強化を目指していた」(開発技術部の板橋秀之課長代理,写真1左)からだ

 同社はこれまで,以下のような手順でシステムを運営していた。(1)サービス利用者宅内に設置したセキュリティ装置が侵入者を検知すると「ガードセンター」と呼ばれる監視指令センターに通知が入る,(2)ガードセンターの指示員が警報を発した現場を確認し,該当エリアを担当する隊員に業務無線やポケベル,携帯電話などで連絡を取る,(3)連絡を受けた隊員が現場へ急行する,という具合だ。

 一連の手順の中には,人手が介在する工程も多く,場合によっては予想以上に時間を取られるケースが発生していた。「ガードセンターの指示員が隊員に連絡を取る際に,相手が別の現場に急行している最中や,電話がつながらない時もある。このようなケースでタイム・ロスが発生していた」(板橋課長代理)。

 さらに,エリアによって隊員を担当制にしていたことで別の課題も表面化していた。「エリアの境界で警報が出た場合,現場に最も近い隊員が別のエリアの担当といったケースもあった。より速く現場に駆けつけられる隊員がいるのに,仕組み上は生かせなかった」(同氏)。

 このような課題を克服するために,GPSによって隊員の現在地をセンター側が常時把握し,現場に最も速く到達できる隊員を自動的に選択するシステムを目指した。位置の取得には,隊員が常に持っている携帯電話のGPS機能を使うことを考えた。併せて「携帯電話とカーナビをBluetoothで連携して現場の位置入力を自動化することで,現場到達時間のさらなる短縮も目指した」(開発技術部の田中智章氏,写真1右)。

 2006年に入り,携帯電話事業者3社とPHS事業者であるウィルコムに対して前述のような機能を持つシステムの提案を依頼した。最終的にBREWによって柔軟なシステム開発が可能で,かつカーナビと接続できるBluetoothプロファイルを備えた携帯電話をそろえていたKDDIを,事業者として選定した。