オンライン証券大手マネックス証券(東京都中央区)などの持ち株会社マネックスグループは、BI(ビジネス・インテリジェンス)システムの開発に取り組んでいる。収入やコストなどの財務情報をすべての従業員に対して「見える化」し、個別のプロジェクトの評価や検証に役立てる狙い。2009年3月の稼働を目指している。

 BIは各種のシステムで収集したデータを加工・分析して企業の意思決定に生かす仕組み。既に導入済みの企業は多いが、その大半は経営者や一部の業務担当者が活用する程度にとどまっている。あらゆる従業員が利用することを目指した取り組みは珍しい。(関連記事)

 今回のシステム開発は松本大・代表取締役社長CEO(最高経営責任者)の意向によるもの。米リーマン・ブラザーズの経営破たんが象徴するように、金融業界は危機のまっただ中にある。こうした逆風下を生き抜くために、マネックスは経営上のリスクやそのリスクが顧客に及ぼす影響など、財務データを分析して気づいたことがあれば、誰もがすぐに発信できる環境を整備する必要があると考えた。

 開発責任者である兼子公範CIO(最高情報責任者)は「BIは経営者向けにきれいに加工して見せるツールという印象が強い。しかし当社では、加工度の低い生データに近いものを従業員に提供する」と話す。個々のプロジェクトの評価・分析に必要な情報を、各従業員が自主的に抽出し、分析する姿勢を身につけることを促すためだ。

 こうして自発的に分析する姿勢を従業員が身に付けると、「各プロジェクトのROI(投下資本利益率)の改善も見込める」(兼子CIO)。同氏は管轄するIT(情報技術)部門を例に挙げ、「データの裏付けがある仮説・検証を実施してからITシステムを導入すれば、開発したものの現場では使われないという、ITで起こりがちな事態を防げる」と期待を寄せる。