生コンクリート製造・販売会社の東伸興産(横浜市戸塚区)は2008年4月,GPSと連携した車両管理システムを刷新した。地図上にミキサー車の位置や速度などを表示できるシステムで,配車をより効率よく確実にする狙いがある(写真1)。

写真1●東伸興産のミキサー車。生コンクリートを積んでから90分以内に荷おろししなければならない
写真1●東伸興産のミキサー車。生コンクリートを積んでから90分以内に荷おろししなければならない

 導入の背景には,生コンクリートという商品独自の事情がある。生コンクリートは時間がたつと固まる性質のため,「練り混ぜてミキサー車に積んでから90分以内に荷おろしをしなければならない」(東伸興産の斉藤俊営業部長兼工場長)と,JIS(日本工業規格)で規定されている。作業現場に複数のミキサー車を派遣しなければならない場合には,1台のミキサー車が生コンクリートを荷おろしするタイミングを見計らい,次のミキサー車の荷おろしが制限時間内に終了するように配車する必要がある。

 同社は2003年からGPS連携の車両管理システムを導入していたが,2008年4月から新たに京セラコミュニケーションシステム(KCCS)と住友セメントシステム開発(スミテム)が共同開発した「Super Net PS-G」を採用。地図アプリ上に経路や帰着予想時刻,車両速度を表示できるようにするなどの機能強化を図った。

 Super Net PS-Gは,スミテムが独自開発した車両管理システムと,KCCSの位置情報のASP(application service provider)サービス「SAVE PLATFORM」とを連携。SAVE PLATFORMからミキサー車の位置情報を転送して表示するシステムである。

GPS端末は持ち運び可能

 ミキサー車にはKCCSが開発した小型のGPS端末「イチしるべ」を搭載する(写真2)。イチしるべが取得した場所,速度,方位,時刻など位置情報のデータを「KWINS 3G」と呼ぶKCCSのモバイル通信網を経由してKCCSのデータ・センターに送信。東伸興産のオフィスにある車両管理システムのクライアント端末が,KCCSのデータ・センターに蓄積したデータをVPN経由で取得して地図上に表示する(写真3)。

写真2●ミキサー車に搭載するGPS端末「イチしるべ」
写真2●ミキサー車に搭載するGPS端末「イチしるべ」
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写真3●車両管理システムの地図上にミキサー車の位置情報を表示
写真3●車両管理システムの地図上にミキサー車の位置情報を表示
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 位置情報のデータは,2分間に1回の間隔で取得して,画面表示を自動更新する。イチしるべは据え置き型ではなく携帯型であるため,一時的にレンタルしたミキサー車にも簡単に搭載できる。

 イチしるべを搭載したミキサー車が生コンクリート工場を出発すると,現場に向かっている途中,現場への到着,荷おろし作業中,作業を終えて工場に帰着──などのミキサー車の状態が車両管理システムの地図上に逐一表示される。ミキサー車の状態は,イチしるべが取得する位置情報に基づいて自動判別する。配車の管理者は,画面を見ながら作業の終了時間を予想したり,次のミキサー車の配車をいつごろに手配すればよいかを判断したりする。

 「位置情報を参照することによって,担当者が経験や勘に頼らずに効率的に配車できるようになった」と,斉藤部長はその効果を語る。現場から配車の問い合わせがあった際にも,地図上の位置情報を見れば即座に回答できる。さらに,正確な配車ができることで,余分に車を派遣することがなくなるというコスト削減効果もある。

 Super Net PS-Gは,今年4月からスミテムとKCCSが共同で販売している。第1号ユーザーとして東伸興産が採用したが,「2009年にかけて約10社での導入が決まっている」(KCCS)という。