ICカードから携帯電話まで多様な手段で勤怠入力

 新しい勤怠管理システムは自前では構築せず、事業者が勤怠管理の機能を期間貸しするASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)型のサービスを採用した。理由は大きく2つある。1つは、拡張の柔軟さを重視したこと。グループ各社が段階的に移行するので、初めから大がかりなシステムを構築するわけにはいかなかった。

 もう1つの理由は勤怠の入力手段の多様さである。各社の業態や勤務形態などによって最適な入力手段は変わってくる。プリンスホテルの古清水全人情報システム部次長は「スキー場の頂上に常駐する従業員や、ゴルフ場のグリーンを維持する従業員にとって、遠く離れた管理事務所まで戻って出退勤を入力するのは面倒。ウェブブラウザを搭載する携帯電話機などで、その場で入力できることが望ましかった」と語る。

 様々な入力手段に1つずつ対応してシステムを構築するのは手間がかかりやすい。西武グループが導入したネオレックス(名古屋市)のASPサービス「バイバイ タイムカード」は標準仕様でICカードやバーコード・リーダーのほか、ウェブブラウザを搭載する携帯電話機での出退勤入力にも対応する。西武グループはネオレックス以外のサービスも検討したものの、大半はサービス入力手段が限られていたことからバイバイ タイムカードを採用した。

兼務者の出退勤管理の事務作業を年150時間軽減

 新体制の運用開始から1年半経過したプリンスホテルは、都市型ホテルとリゾートホテルを兼務する従業員の出退勤記録の事務作業を年間150時間以上軽減するなどの成果を得た。

 同社では都市型ホテルに所属する従業員が、リゾートホテルの繁忙期などに応援に加わる。特に夏期には1カ月半で延べ約450人、また冬期には3カ月間に同500人が応援部隊となる。このため、ある従業員が同じ月内の前半に都市型ホテルに勤務し、後半にリゾートホテルを赴任するような形態が発生する。

 従来の体制では、こうした場合の出退勤管理が煩雑だった。具体的には、リゾートホテル側が管理する出勤簿のデータを都市型ホテル側が受け取り、合算してデータとして入力し直す作業が発生していた。1件当たりの換算で約4分30秒かかっていたという。

 新システムに移行してからは、勤務地が変わっても同じサーバーで勤怠管理データを管理し、自動的に集計できる。勤務時間の合算・再集計といった作業が不要になり、年間当たりで150時間50分の事務作業の軽減効果となった。

■変更履歴
本文中,「プリンスホテルの古清水全人情報システム部長」とありましたが,正しくは「プリンスホテルの古清水全人情報システム部次長」です。お詫びして訂正します。文中の表記は修正済みです。 [2008/09/26 13:00]