ヤマト運輸の情報システム開発や運用を担うヤマトシステム開発(東京都江東区)は、ヤマト運輸の各配送拠点で使用する業務システムを二重化して管理する災害対策を強化している。既に2008年4月に稼働済みだが、これまでの運用を踏まえ、9月中にも二重化の対象とする業務システムを見直し、さらなる強化を図る計画だ。

 新システムは東京都内と大阪府内にあるデータセンターの2カ所で同期を取り、配送拠点で利用する業務に必要な情報を守る。システム開発に取り組んだデリバリーソリューショングループの田中従雅リーダーは「2カ所のデータセンターで情報を蓄積しても保守コストをこれまでと同額に抑えるために苦心した」と明かす。

 ヤマトでは従来、「配送センターに着荷」といった顧客から預かった荷物の追跡情報についてはシステムを二重化して管理してきた。一方で、配送拠点で使用する業務システムは2004年に刷新するまで、各配送拠点で独立したシステムを導入していたため、仮にデータセンターが災害などで機能不全となっても配送拠点内の業務が滞る危険性は低かった。

 しかし、2004年以降はデータセンターがウェブブラウザを介して、各配送拠点に集荷や再配達の指示情報、取引先が配送伝票を印字するための顧客管理システムといった情報を提供する方式に切り替えていた。配送拠点で使用する情報をデータセンターで一元管理するようになったことから、データセンターが地震などの災害で被災すると、全国の配送拠点の業務が滞る可能性が生じてきた。「ちょうどサーバーのリース期間が満了したことや、IT(情報技術)ベンダー各社から必要なシステムだけを二重化できるソフトウエアが出始めてきたので、今回二重化を決めた」(田中諭マネージャー)という。

 すべてのシステムを二重化すれば保守コストが増大してしまうため、社内向けのシステムは対象から外し、ダウンしてしまうと顧客に迷惑のかかる領域だけを二重化することにした。「災害が発生した配送拠点でも、復興作業で集配の依頼はある。システムが止まれば顧客の業務に影響してしまう」(同)からだ。

 ヤマトシステム開発は今後もヤマト運輸の情報システム部門と協議しながら、二重化の適用範囲を年2回調整していく。「ヤマト運輸が法人向けサービスを強化しているなか、今後、二重化の適用範囲が拡大することも考えられる。今回の仕組みによって必要なデータだけ二重化できるようになったので、保守コストの抑制にもつながる」と宇田川昭彦本部長は意気込んでいる。