写真●かんばんに付いているICタグをかざして作業時間を自動記録する(写真撮影:上野 英和)
写真●かんばんに付いているICタグをかざして作業時間を自動記録する
(写真撮影:上野 英和)
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 トヨタ自動車グループで、自動車の内外装部品などを製造する豊田合成は2008年8月、従業員の作業時間をコンピューターで自動計測する取り組みを試験的に開始した。電子かんばんとして既に使っているICタグの情報を製造管理システムと連携させることで、部品の組み立て作業などの所要時間を毎回計測するものだ。各回の作業時間を見える化し、問題発見とその早期解消に役立てる狙いである。

 従業員は作業を1回終えるたびにICタグを読み取り機にかざす。これにより、各回の作業時間のデータを製造管理システムに自動的に記録する。それぞれの作業に標準時間を設定し、自動記録した作業時間が標準時間を何度も超えたり、大きくばらついたりする場合には状況を即座に確認する。「午前中の作業の無駄、ムラの発生を突き止め、午後に検証や作業手順の修正ができるようになる」(大竹一美取締役安全健康推進部担当、生産管理部長)

 トヨタ生産方式には異常を知らせるための「アンドン」という仕組みがあるが、このICタグを使った体制は、標準作業時間のばらつきという小さな異常を知らせるいわば“電子アンドン”の役割を果たすものといえる。

 同社は従来も従業員の作業時間を計測し、改善に役立ててきた。ただし、紙に記録していたため、業務の終了後に集計し直す作業が発生していた。集計の結果が判明するのは早くても翌日になるため、当日の対応は後手に回らざるを得なかった。現在は試験運用中のため、紙ベースの記録も併用しているが、10月にも紙の記録を止めて本格導入したい考えだ。

 作業時間を記録するためのICタグは、同社が以前から電子かんばんとして運用してきたものをそのまま利用する。作業に大きな変更が発生しないため、従業員の負担も変わらないとしている。