金属チタン製錬大手の東邦チタニウムは,チタンインゴット(金属チタンの塊)製品の販売・製造・物流などを統合管理する生産管理システムを新たに構築,2008年9月末に新システムへの移行を完了する。新システムの構築に当たっては,1カ月単位で開発と要件確認を繰り返すアジャイル開発の手法を適用した。

 新システム構築の狙いは,チタンの需要拡大に対応するための生産能力拡大や,経営環境の変化に柔軟に対応するための業務改革の実現。今年4月の福岡県北九州市の工場新設に合わせて,新システムの稼働を開始。6月末には,茨城県,神奈川県の2工場を合わせた3工場へ利用を拡大した。旧システムと並行稼働している在庫管理システムが9月末に新システムに移行すると,新・生産管理システムへの移行が完了する。

 同社では従来,調達管理や在庫管理,生産管理,物流管理など,業務ごとに独立したシステムを利用していた。そのため,業務間のデータのやり取りに手間がかかるという課題があった。新システムでは,これら各業務のデータを一元管理する仕組みにすることで業務効率向上を見込むほか,必要な業務情報をリアルタイムに可視化できるようにする。また,インゴットの原料配合計算のチェック・プロセス整備による品質向上や,生産工程の進捗の可視化など,システム化だけでなく業務改革にも取り組んだという。

 新・生産管理システムは,さまざまな業務を束ねる。そのため同社には,実際に動作するシステムを見ながら要件を詰めたいという要望があった。また,新工場の稼働に合わせた開発のため,システムの要件が早期に確定しづらいという課題もあった。

 これらの課題に対応するため,同社が採用したのがアジャイル開発だ。反復する開発サイクル(イテレーション)を1カ月とし,2007年2月から2007年10月まで,計9回のイテレーション開発を実施。実際に動作するシステムを使ってユーザーに要件の確認を行いながら開発を進めた。

 新システムの構築は,ウルシステムズと共同で行った。業務の検討やシステム設計,アジャイル開発の計画やマネジメントなど,プロジェクト全体を通じて協業した。