自動改札機を手掛けるオムロンは2001年度当時、赤字に苦しんでいた。同社で鉄道会社向けに自動改札機などを提供する事業部門では、仕様の標準化や部材の標準モジュール化を営業と設計が一体で推進。新札需要のあった2003年度を上回る対売上高営業利益率8.3%を達成した。

 どこのメーカーでも、部品の共通化や標準化は、コスト削減を図るための手法として取り組みが進んでいる。だが、一般消費者向けの家電製品などの分野ではこうした取り組みは進んでいるが、個別受注で商品を提供する産業用機器分野では、なかなか取り組みが進みにくい。営業担当者は受注を取ろうとするあまりに、どうしても特別仕様を“言いなり”で取ってしまう傾向があるからだ。

 だが、設計部門と営業部門が二人三脚で受注仕様の標準化に取り組み、利益を生む事業体質作りに成功した事例がある。自動改札機などを鉄道会社に販売するオムロンのソーシアルシステムズ・ソリューション&サービス・ビジネスカンパニー(SSB)が2004~2006年度に実施した業務改革だ。わずか3年間で設計と営業にまたがる改革を成し遂げた。

●改札機事業を担当する公共ソリューション事業部における営業改革のポイント
●改札機事業を担当する公共ソリューション事業部における営業改革のポイント

 自動改札機事業の採算性は悪化の一途をたどっていた。当時、自動改札機関連事業や金融機関向けのATM(現金自動預け払い機)などを手掛けるSSBは、 2001年度に30億円の営業赤字に陥っていた。オムロン全体でも最終赤字になり、「グループ生産性構造改革」に取り組んでいた最中だった。

 オムロン全社で人員削減や不採算事業からの撤退を進めるなか、SSBは2004年にATM関連事業を日立製作所との合弁会社に引き渡しスリム化した。しかし、SSB内の主力事業部門である公共ソリューション事業部が手掛ける自動改札機事業の撤退はあり得なかった。需要急増が見えていたからだ。関西地区の私鉄で利用できるICカード「PiTaPa」と関東地区の私鉄で利用できるICカード「PASMO」の導入が迫っていた。「パスネット(関東地区の私鉄などで利用できた磁気カード)への対応時と比較すると受注量は倍。だが、その需要増に従来の半分の開発要員で対応することを課せられた」(経営企画部の水野誠主幹)状況だった。