インテリジェンスは内定者を数十のチームに分け、個人とチームの紹介ビデオを製作させている。ビジネスの喜びと厳しさをいち早く知ってもらうことで、会社への思いを深めてもらう
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 総合人材サービス会社のインテリジェンスは来春入社予定の学生を4~6人ずつに分けて約60チームを結成し、自己紹介ビデオを製作させた。9月に全国を2ブロックに分けて予選上映会を行い、10月に決勝戦を開催する。予選も決勝も、内定者による投票で優秀作品が決まる。

 「i-project」と呼ぶこの研修は、3年前に本格的に始めた。「内定者同士の横のつながりを深め、チームワークや達成感といったビジネスの喜びを知ってもらいたい。また、入社するまでお客様扱いだったのに、入社したとたんに現場でガツンとやられると、彼らの気持ちが壊れかねない。(時間や気持ちに)余裕がある学生のうちに、ビジネスの世界への階段を上る仕組みを提供したかった」と、HITO本部の平沢恵美新卒採用グループリーダーは同研修導入の狙いを語る。

 今年度のi-projectは、6月下旬から順次全国各地で開催してきたオリエンテーションで幕を開けた。この場で、各チームのメンバーが初めて顔を合わせ、研修の詳細が伝えられた。インテリジェンスの社員が2人ずつ各チームにサポート役として付き、8月下旬までにすべてのチームが5分間のビデオ作品を提出し終えたところである。

 ビデオ製作期間は約1カ月半だったが、途中で進ちょく状況を2~3人の審査員の前で発表する中間プレゼンテーションの場が設けられた。「その説明では映像が頭に浮かんでこないんだよね」「ありきたりな内容のビデオが何本も続いたら、登場人物なんて誰一人記憶に残らないよ」など、審査員役を務める平沢リーダーなどインテリジェンスの社員からは、学生チームの企画やプレゼンテーションの甘さに次々と厳しい指摘が飛んだ。

 ビデオの命題はメンバーとチームの両方の個性を表現することだ。しかし中間段階ではメンバー紹介にこだわりすぎ、チーム表現が欠けているケースが多かった。「5分という短い時間で、どうすればメンバーとチームの個性を聴衆の記憶に残すことができるか。情報を詰め込み過ぎてもだめだし、必ずしも素の自分を映せばいいというものでもない」(平沢リーダー)。自分で考える習慣をつけてもらいたいので、各チームに対してあまり具体的なアドバイスは送らず、ヒントだけ与えるように気を付けている。

 昨年度の最優秀作品は、80kg超の男子学生が45日間で約20kgものダイエットに成功するまでの様子を描いたビデオだった。ダイエット作業をチームメンバーで役割分担して手伝うことによって、各メンバーの共同作業における個性やチームの能力が上手に表現できたという。

 もちろんこの研修で最も重要なのは、ビデオ作品そのものではなく、限られた時間と資源のなかで最大限のアウトプットを出そうとチームで真剣に考えて行動するプロセスだ。やる気のあるメンバーと冷めたメンバーの間に温度差が生じたり、意見が対立して険悪な雰囲気になったりするチームも少なくない。インテリジェンス社員に相談しながら迷走するチームをゴールに導くことで、同社でのビジネスの基本や社風に自然と触れていける。入社前に企業の真の姿に触れる機会を得られるので、学生と企業のミスマッチを防ぐ効果もありそうだ。