ブラザー工業の修理情報システム構築にかかわった平居範久氏(左)と鈴木禮奉氏

 ブラザー工業は修理情報共有システム「データバンク3」を活用し、全社的に修理工数の削減を進めている。同社は近年、個人や小規模事業者向け製品を拡充しており、その分、修理件数が増大している。修理担当者のノウハウを蓄積して最適な修理手順を示すデータバンク3の導入で効率化を図っており、1~2割程度の修理工数削減効果があるという。

 データバンク3は2006年12月から世界各国の拠点で稼働し、現在も修理データの蓄積を進めている。大容量の文書管理ができる米オラクルのECM(エンタープライズ・コンテンツ・マネジメント)パッケージソフトを基盤に、アビームコンサルティング(東京・千代田区)と共同で開発した。

 デジタル複合機を中心とした全製品の図面や取扱説明書、修理マニュアルなどの電子文書を一元管理。故障機を引き取った修理担当者が、機種名や液晶画面に表示されたエラーコードなどの情報を入力すると、データバンクの画面に修理手順の動画などが表示される。

 「従来は修理担当者の経験や勘で修理部位を特定していたが、これを自動化したいと考えた」とCS推進部CS第1グループの平居範久グループ・マネジャーは説明する。具体的には、データバンク3では「紙詰まりがある」といった現象を入力すると、故障が予測される部位が「確率」順に表示される。この確率の値はデータの蓄積に従って変動し、修理回数を重ねるほど修理部位を“学習”し、より正確な予測が出るようになる。

 こうしたデータを基に、故障する確率が高い部品は予防的に交換する取り組みも実施。「故障したものを直すという受け身の姿勢から、もっと能動的にアフターサービスを管理したいと考えた」(平居氏)という。

 ブラザーはデータバンク3を修理・メンテナンス業務以外にも活用している。設計担当者もデータを参照しており、特定の部位で故障が頻発している場合は、設計そのものの変更を検討する。品質問題が疑われる情報が入力された場合は、解決されるまでのプロセスを入力し、所要時間をKPI(業績評価指標)として測定する。

 日本語だけではなく英語・中国語など多言語に対応しているのも特徴。各国拠点で入力した情報をリアルタイムで共有できる。海外で発生した故障で修理法が見つからない場合、その情報を入力しておけば、時差のある日本の技術者が見て、翌朝には解決していることも多いという。