グループ報「ism」と社員向けウェブサイト「web-ism」の編集に携わる西武ホールディングスの総合企画本部広報室の上島正弘氏(左)と石山徹課長(中央)、広報部の大堀伸一郎課長補佐(右)
グループ報「ism」と社員向けウェブサイト「web-ism」の編集に携わる西武ホールディングスの総合企画本部広報室の上島正弘氏(左)と石山徹課長(中央)、大堀伸一郎課長補佐(右)

 西武鉄道(埼玉県所沢市)とプリンスホテル(東京・豊島区)が西武ホールディングス(西武HD、埼玉県所沢市)の傘下に入るという組織再編から2年半が経った。株式の再上場を目指す同社では、紙媒体である「グループ報」とウェブサイトを経営方針の徹底及びグループの一体感の醸成に積極的に活用している。

 2006年3月に西武HDとして再出発する以前には、各社に社内報が存在していたものの、西武グループとして従業員向けに情報を発信する媒体はなかった。ホテルや鉄道といった業種が異なる企業同士ではその必要性が高くなかったうえ、堤義明氏というワンマン経営者がグループの顔として求心力を保っていたからだ。「各社がバラバラにがんばっていて一体感はそれほど要らなかった」(西武ホールディングス総合企画部広報室の石山徹課長)。

 従業員の帰属意識や「西武らしさ」という企業文化を追求するきっかけとなったのが、堤氏の辞任や東京証券取引所での西武鉄道の上場廃止といった紆余曲折を経た2006年3月のグループ再編。ホールディングスの広報室社員が、季刊のグループ報「ism(イズム)」と社員向けのインターネットサイト「web-ism」を立ち上げた。ismは「Information for Seibu group Members」の略である。

 紙媒体であるismは西武全体の経営理念である「グループ理念」と社員の行動指針「グループ宣言」の発信に力を入れている。毎号の特集も各社の情報とともにグループのビジョンに関連するものが並ぶ。またグループの全社員を対象にしたアンケートからビジョンに沿った仕事ぶりを年に1度表彰する「ほほえみ大賞」の審査発表にもページを大きく割いている。鉄道やバス、タクシー、ホテル、不動産、レジャーといった多様な業種でも共通する顧客志向の実践を紹介することで、目指すべき社員像を明らかにし、西武HDの一員であるという意識を植え付ける。

 ネットのweb-ismは、年に4回刊行というismの合間を埋める役割を果たしている。グループ各社がテレビや新聞などで紹介される際の日時や、社員割引サービスといった情報をタイムリーに発信している。イントラネットではなくIDとパスワードがあれば社外にいても閲覧できる仕組みにしたのは、社員に自宅からアクセスしてもらうため。ホテルや駅で働く従業員の多くは社内のパソコンに向かう時間が短いからだ。

 紙のismが経営方針の周知徹底を目指す一方、ネットのweb-ismは双方向性を活用して社員同士の横のつながりを強める場となっている。今年2月には、仕事上の疑問・悩みを解決し合う「教えてBoo!」や様々なテーマごとの掲示板がある「SEIBUカフェ」、後藤高志社長による日記「社長のきもち」といったコンテンツを加えた。

 ismとweb-ismの編集部である西武ホールディングス総合企画本部広報室の社員は、プリンスホテルや西武鉄道の社内報の編集メンバーでもある。そのため社内報とグループ報の“書き分け”には苦労しない。「最近はismの知名度も上がり、グループ各社への取材のアポイントも入りやすくなってきた。『西武グループの一員である』という社員の意識は日々高まっている」と口をそろえる。

■変更履歴
写真のキャプションで大堀伸一郎氏の肩書きに誤りがありました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/08/27 19:25]