ジョンソン・エンド・ジョンソン エチコン事業部マーケティング部の川名範明ディレクター(写真左)、戸上浩昭マーケティングコミュニケーションリーダー(写真右)

 ジョンソン・エンド・ジョンソン(東京都千代田区)で外科手術用の針や糸を販売するエチコン事業部は、社内ブログを活用して営業ノウハウを共有することにより、発売から20年が経過した成熟商品の新市場開拓に成功した。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは手術用の縫糸という成熟商品について70%以上の市場シェアを握る。今回、販路拡大に取り組んだ商品は、手術後の傷跡が目立ちにくくなる真皮縫合と呼ばれる縫い合わせ手法に利用する針と縫糸だ。真皮縫合は患者の美容意識が高い形成外科ではごく一般的な手法だがガン手術ではほとんど実施されてこなかった。

 そこで2007年4月に、ガンを手術する外科医に真皮縫合用の針と縫糸を採用するよう提案する活動を開始。約1年半で、ガン手術時の真皮縫合の普及率を15~20ポイント程度押し上げたという。同社は商品の正式な販売数量を公開していないが、大幅に増えたことは間違いない。「大型の病院施設が受け入れたため、注目度が高まった。今後の売れ行きも期待できる」(川名範明エチコン事業部マーケティング部ディレクター)。

 もっとも、真皮縫合の必要性をほとんど認識していない医師に提案する以上、そう簡単に受け入れてはもらえなかった。そもそも、「コンセプトを聞かされた当社の営業担当者たちがあっけに取られていた」(戸上浩昭エチコン事業部マーケティング部マーケティングコミュニケーションリーダー)。営業担当者自身、売れるなどとは全く思っていなかった。

 ここで社内ブログの出番になる。一部の営業担当者が医師から良好な反応を引き出せた際に、その提案方法をマーケティング部の担当者が聞き出し、ブログで発信した。これをほかの営業担当者が閲覧することで、ノウハウを共有できた。今回のガン手術の場合であれば、「真皮縫合をすることで術後感染を減らす可能性があり、術後の医師や看護師の手間を減らせる」といった主旨の提案で、良好な反応を引き出しやすくなったという。

 良好な反応が増えてきたなどの情報も、随時ブログを介して随時伝達した。こうした情報を広めるたびに、「営業担当者の意識も前向きなものに変わってきた」(戸上リーダー)。ブログが社内世論の形成にも一役買っている。

■変更履歴
「傷跡が目立たなくなると感染が減るため、術後の医師の手間を減らせる」という表現がありましたが、「真皮縫合をすることで術後感染を減らす可能性があり、術後の医師や看護師の手間を減らせる」 です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/08/20 10:40]