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業種 ABC Cooking Studio
経営も料理教室も「ガラス張り」、講師に求めるのは技術より話術

 ABCの会員数は1987年の創業から20年で20万人を突破し、教室1つで平均2000人の生徒を抱える。99年に初めてガラス張りを採用した「大宮ロフトスタジオ」(さいたま市)になると、5000人もの生徒が通ってくる。ABCは数年以内に約150店まで教室を拡大する計画を持っており、さらなる会員増が見込まれる。教室と生徒の増加に比例し、売上高は順調に伸びている。2008年3月期は前年比約8%増の約150億円に達した模様。経常利益は非公表だが、2008年3月期は売上高の約10%(約15億円)を見込む。ここ数年は出店数の増減に応じて利益率に多少バラツキがあったものの、おおむね 10%前後で推移しており、軌道に乗っている。

 ABCの創業者で、現在は持ち株会社ABCホールディングス(東京・千代田)のCEO(最高経営責任者)である横井啓之氏は「当社の講師には(料理の)腕より口(話術)を求める」と言い切る。料理に対する理解の深さはもちろん大切だが、「むしろ生徒を楽しませることができるかどうかで講師を採用することが多い。つまらない場所に女性は集まらないし、長く通い続けてはもらえない」(横井氏)。つまり、ABCは料理教室という体験型のエンターテインメント企業でもあるのだ。

楽しくなければ、長く通えない

 ABCは料理の腕を磨く一般的な教室や学校と一線を画す。コンセプトは明快で、料理が苦手な女性が基礎から楽しく学べることを教室の売り物にしている。プロ養成機関ではないし、プロ顔負けの家庭料理を作りたい主婦向けでもない。そのことを表現するのが社名のABCだ。これは「料理のイロハ(基本)」を学べることを意味する。

 講師の多くは生徒たちと同年代の女性で固める。生徒を講師にスカウトすることも少なくない。ABCには師匠と弟子といった上下関係は存在せず、講師は生徒にとって身近な存在だ。4〜5人の生徒に1人の講師が付く初心者に優しい少人数制を敷くが、講師がそろいのオレンジのエプロンをしていなければ、ガラス越しには誰が講師で誰が生徒なのか見分けがつかないかもしれない。

 ABCの授業料は12回のクッキングコースが4万1580円で、1回当たりにすると3465円だ。ほかに材料費が毎回800円かかる。初心者向けとはいえ、格安の料金を提示しているわけではない。それでも20万人が会員になり、平均1年の受講期間中に毎月1〜2回通ってくるのは、教室が進んで通いたくなる楽しい場所である証拠だ。生徒によっては、料理を習いに行っているのではなく、みんなで作る料理を食べに来ているレストラン感覚に近い。

●社員であり生徒でもある人たちから声を集めて経営に反映
●社員であり生徒でもある人たちから声を集めて経営に反映

 そんなABCでは、講師に対する評価が料理の技術や知識に比例するとは限らない。話がおもしろく、生徒を楽しませることに長けた講師が高い人気を獲得することが往々にしてある。こうした講師への評価をABCは昇給・昇格に当てはめている。生徒からの評価に応じた賃金テーブルを作って公開し、経営の透明性を確保した。ガラス張りなのは、何も教室の見た目だけではない。

 ABCの生徒は2002年12月に稼働した受講予約システムにパソコンか携帯電話からアクセスして、通いたい教室の場所と日時、そして担当の講師を毎回自由に選択できる。これなら、授業料が無駄になることはない。裏を返すと、この仕組みは講師の人気を数値化するバロメーターシステムになる。ABCは 2003年9月から、生徒からの「指名数」に応じて講師を5段階にランク分けし、公平に処遇することで人事評価に納得性を持たせている。それまでは店長が講師を評価していたが、それでは評価が店長の好みに左右されやすく、生徒からの評価とズレることがあった。そこで生徒からの指名数を評価基準にすると決めた。

 このシステムを開発したチームラボ(東京・文京)は、新しい国産検索サービス「サグール」を開始するなど注目を集めるベンチャー企業だ。同社の猪子寿之社長を含む創業メンバーは当初、ABC内に常駐し、この時に受講予約システムは生まれた。

(川又 英紀=日経情報ストラテジー)  [2008/08/21]
出典:日経情報ストラテジー 2008年6月号  pp.56-59
(記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

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