コスト削減や品質向上にも効果

 Sロット政策の導入は、様々な形で収益に貢献している。早めに生地を発注したり、閑散期の工場を使って生産したりできることなどから、原価の低減にもつながっている。

 三菱UFJ証券リサーチグループエクイティリサーチ部のアナリストである櫻井亮氏は「閑散期と繁忙期では3倍近く製造コストが変わることもある。採算を確保しようとすれば、生地の品質を落としたりボタンを1つ減らしたり、ということになりかねないが、そういうことをしなくても利幅が取れる」と評価する。

 「時間をかけてていねいに作るので、品質面も向上した」と村井ディヴィジョン長は話す。例えば、2008年秋冬シーズンの新作では昔の生地の素材感を出すことを狙って、現在ではほとんど使われていない織機を持つ工場を探し出して発注した。生産に時間はかかるがデザイナーのこだわりが反映された商品が生まれた。

●2カ月の前倒しにより企画や生産にゆとりが生まれる
●2カ月の前倒しにより企画や生産にゆとりが生まれる

 時間的な余裕があれば広告宣伝面でも注力できる。ブランドのコンセプトを伝えるために作成する冊子を、従来のシーズンごとに2回から、3回刷るように強化した。

 スコッチハウスで取り入れられたSロット政策は真新しい経営手法とはいえない。売れ筋を見極めて大量に供給するというのはメーカーとして当然の務めだ。ただし、アパレル業界では“逆張り”の戦略ともいえる。ここ数年、各社はいかに企画から販売までのリードタイムを短縮するかに心血を注いできた。