三陽商会の紳士服事業で部門売り上げの3割を稼ぐ40~50代向けカジュアルブランド「ザ・スコッチハウス」が好調だ。売れ筋予測の精度を高め、重点販売商品の企画を2カ月前倒しにして大量に作り、販売機会の損失を無くすという戦略が奏功した。コストや品質向上面でも効果が表れている。

2008年4月後半から投入する重点商品
2008年4月後半から投入する重点商品

 4月3日、三陽商会が開いた2008年秋冬シーズンの展示会最終日。杉浦昌彦社長は40~50代の男性をターゲットにした主力ブランド「ザ・スコッチハウス」のブースを訪れ、満面の笑みを浮かべて新作を眺めた。満足なのは出来栄えだけではあるまい。数年にわたり前年割れが続いていた同ブランドを、2年前に導入した経営手法によって再び成長軌道に乗せることができたからだろう。

 その手法とは、「スペシャルロット(Sロット)政策」と呼ばれる重点販売戦略だ。売れ筋の予測を立てて、重点的に投入する商品を絞り込んで大量に生産・販売する。狙いは「販売機会の損失を無くす」(杉浦社長)ことに尽きる。消費低迷が続くなか、着実に売り上げを確保するには、機会ロスを生じさせないことが最大の条件となる。

 だが、従来は商品がヒットしても、供給が追いつかず、欠品を生じてしまうことが少なからずあった。事前に売れ筋商品を見極めて大量に生産し、店舗に適切なタイミングで投入すれば、そんな機会ロスも無くせる。

●メリハリのある生産計画でヒットを生む
●メリハリのある生産計画でヒットを生む

 Sロット政策の成果が本格的に表れ始めた2007年、スコッチハウスの売り上げは前年比1割近い伸びを示し(次ページの図)、2008年に入っても前年同月比6~7%増で推移している。三陽商会の連結売上高の約35%を占める紳士服事業の中で、スコッチハウスはおよそ3割の売り上げを稼ぐ。同ブランドの増収が寄与して、三陽商会は2007年12月期に前期比2.8%増となる1430億9300万円の連結売上高を計上した。

●2007年以降、売り上げは前年同月を上回るペース
●2007年以降、売り上げは前年同月を上回るペース

 もっとも、売れ筋の予測を誤れば、大量の在庫を抱えることになる。Sロット政策を成功させるには、売れ筋を的確に見極める予測精度の高さが求められる。そのため、三陽商会は企画、生産、販売のプロセスをすべて見直し、各部門が一体となって重点商品を決めていく改革を実施した。2004年2月にブランドごとのディヴィジョン制を導入しており、部門を一気通貫する戦略の下地はできていた。