日産自動車が女性ユーザーの視点を取り込んだ商品開発に力を入れている。その活動の中心を担うのが2006年8月に設立された女性視点目標設定グループだ。2008年6月に発表したばかりの高級セダンの新型「ティアナ」は同グループが試作段階から参画して成果を世に問うた第1弾だ。女性でないと気づきにくい感性価値を実現しようと、内装設計などに工夫を盛り込んだ。

 女性視点目標設定グループの特色は、内装設計や技術開発などにまで踏み込んで、設計に参画する点。同グループは技術開発本部カスタマーエンジニアリング部にあり、2008年8月現在でメンバーのうち4人が女性だ。

 ティアナでは、座席シートやカーナビの仕様などに同グループがかかわった。例えばシートは、スカートをはいた女性が足をそろえて降りやすいようにしたり、小柄な女性に合わせて角度を変えやすくしたりした。操作時に爪が割れるといった不安を感じさせないように、カーナビの操作盤には爪が当たらない平坦なボタンを採用している。シートの触り心地や買い物袋の積み下ろしやすさなどにも工夫を凝らした。

 同グループは、様々なシチュエーションで女性が感じる心地良さを定量的な技術仕様に"通訳"することが重要な仕事だ。女性視点目標設定グループの岸田真柄氏は「『赤ちゃんの肌のようなすべすべしたシートがほしい』と女性顧客から意見されても、現場のエンジニアはなかなか技術仕様に落とし込めない。顧客が求める価値を具体的な数値目標に置き換えるのが私たちの役割」と説明する。

 同社によると、新車を購入する顧客における女性の割合は3割程度ながら、購入の意思決定に女性がかかわる比率はおよそ3分の2に上るという。マーケティング面で女性の意見を取り入れる自動車メーカーは多いが、設計段階で参画してもらい感性価値を具現化しようという試みは珍しい。今回のティアナは試作から携わったが、同グループが開発の初期から参加した新製品は2010年発売をメドにしている。