カルビーの江木忍・執行役員CRMグループコントローラー
カルビーの江木忍・執行役員CRMグループコントローラー

 カルビーが運営する無料の会員制ウェブサイト「カルビーマイページ」へのアクセスが好調に伸びている。新商品やキャンペーン、商品情報などを知らせる目的で運営しているサイトだが、2008年5月には前年比の2倍以上の月間1770万ページビュー(PV)を記録した。

 人気上昇の理由は、ゲームのコンテンツだ。仮想農場でジャガイモを育成するゲーム「カルビレッジじゃがいも農場」を2007年9月に開始し、続いて農場で作ったジャガイモを使って仮想工場でポテトチップを製造するゲーム「カルビレッジ工場」を2008年3月に開始した。

 ただ単に遊んでもらうだけでなく、同社の品質管理への努力がさりげなく伝わるようにしているのが巧みな点だ。前者のカルビレッジじゃがいも農場ではジャガイモの育成環境の豆知識などを紹介し、後者のカルビレッジ工場では、実際のポテトチップ工場内の様子や業務を紹介するコンテンツも入れ込んだ。ジャガイモを保管する際の温度管理の大切さや、ポテトチップ製造時の衛生管理の手法なども詳細に紹介している。

 江木忍・執行役員CRMグループコントローラーは「当社の品質確保への取り組みを楽しく会員に理解してもらおうと、ゲームを掲載した」と説明する。社会的に品質偽装事件が相次いでいることを受け、同社のお客様相談室に「品質管理の様子を知りたいため工場を見学したい」といった声が寄せられることが増えているという。とはいえ、すべての顧客に工場を見学してもらうことは難しい。そこで企画したのが、農場や工場をウェブ上で仮想的に再現するゲームだった。

「カルビレッジ工場」で工場の各工程を紹介する画面
「カルビレッジ工場」で工場の各工程を紹介する画面。ポテトチップ製造時の衛生管理の手法などを詳細に紹介している
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 品質管理の大切さを分かってもらおうと、品質確保にこだわったゲーム内容にしている。例えば土壌づくりや水やりを怠ると、品質の低いジャガイモしかできず、ポテトチップを製造することもできなくなってしまう。"ゲームクリア"ができない会員から不満の声も寄せられるほど、品質の条件をシビアに設定している。問い合わせが入った際には、「実際の現場でも品質の高いジャガイモでポテトチップを製造していることを丁寧に説明している」(江木執行役員)。食の安全に関心を持つ消費者が増加する中で、顧客学習の推進にウェブを巧みに役立てた事例といえるだろう。