工作機械などを取り扱う専門商社の三立興産は,携帯電話と内線を一体化したシステムを構築した。端末には,NTTドコモのFOMA/無線LANデュアル端末「N902iL」を採用。昨年の秋から導入を開始し,現在の台数は14拠点合計で約140台になる。
新システム導入によって,社員間のコミュニケーションを円滑にする環境を整えただけでなく,通信コストの削減も達成。N902iLが内蔵する非接触ICカード「FeliCa」を使って,サーバー室の入退室管理やタイム・レコーダーの端末としても活用している。
迅速に連絡できる環境を目指す
同社が電話システムを更改した目的は,コミュニケーションの迅速化を実現すること。「必要なときに必要な人と迅速にコンタクトが取れる環境を整えて,営業社員の稼働率を高めたい」(同社の加藤斉社長)との狙いがあった。
写真1●三立興産 情報通信部の小島稔部長(左)と神谷久EDP-ROOM課長(右) 今回導入した入退室管理システムは,小島部長自ら構築した。 |
同社の社員は社外に出ることが多いだけでなく,社内を動きまわることも多い。これまでも社員に携帯電話を貸与してきたが,社内にいる際の通話も携帯電話で済ますことが多く,通信コスト削減が課題となっていた。そのため,「携帯電話と内線電話を一体化して,より効率的に相手とコミュニケーションできる環境を構築したい」(同社情報通信部の小島稔部長,写真1左)との思いは強かった。同時に携帯電話が搭載するFeliCa機能を用いて,入退室管理やタイム・レコーダーに応用する構想を持っていた。
こうした要求や構想を実現する手段として選んだのがN902iLである。出先では携帯電話,オフィス内では無線の内線IP電話として利用できるだけでなく,内蔵するFeliCa機能を使って入退室管理にも活用できる。
050番号を内線番号に利用
同社のシステムは,NTTコミュニケーションズのIP電話サービス「OCN ドットフォンオフィス」を採用。050番号を社員間の内線番号や外線発信用に利用する(図1)。拠点間の内線通話もOCNドットフォンオフィスを用いている。そのためN902iLは,内線用に使う050番号と外線着信用のダイヤルイン番号(0AB~J番号),さらに携帯電話の番号である090/080番号の3番号を使い分ける形になる。
図1●050番号と外線ダイヤルイン番号を使い分ける 社員一人ひとりに050番号を付与し,NTTコムのIP電話サービスを内線通話や外線発信に利用している。本社にはSIPサーバーを設置して,主に外線のダイヤルイン着信やソフトフォンの制御などに活用している。 [画像のクリックで拡大表示] |
本社内にはNECのIP-PBX「UNIVERGE SV7000」を設置した。OCNドットフォンオフィスの音声トラフィックを中継しているほか,固定電話のダイヤルイン着信や,社内のパソコンにインストールしているソフトフォンの制御に活用している。呼制御のプロトコルにはSIP(session initiation protocol)を使う。本社内にはNEC製の無線LANアクセス・ポイント「WL1500」を設置。各拠点にはアイコムの無線LANルーター「AP- 5100VoIP」を導入した。社員のプレゼンス(在席情報)を管理するサーバーも配備している。
携帯料金は月120万から80万円に
システム更改による通信コストの削減効果は大きかった。「前年同月比で,月額約120万円だった携帯電話の通信費が月額80万円になり,約3割も通信コストを削減できた」(同社情報通信部の神谷久EDP-ROOM課長,写真1右)。これまで社内で発生していた携帯電話による通話が,「システム更改によってIP電話経由の発信に変わった点が大きい」と神谷課長は分析する。
導入に当たって大きなトラブルは無かったが,困っているのはバッテリーの持続時間が短い点。「頻繁に利用している社員の端末は,バッテリーが1日持たない。ぜひ改善してほしい」と小島部長は語る。
入退室管理は独自に構築
N902iLのFeliCa機能を使った入退室管理システムやタイム・レコーダーは,小島部長自らが機器を調達してシステムを構築したという。「雑誌の広告でFeliCaを入退室管理に応用できる機器を見つけ,“これだ”と思い取り寄せた。自前で構築したため,導入費もそれぞれ30万~40万円程度で済んだ」(小島部長)。
サーバー室の入退室管理には,アート製のFeliCa対応リーダー「NW-L10」を利用している(写真2左)。登録したFeliCaカード(ここでは N902iL)をかざすことで接続した電気錠を開閉できる。LANの接続端子も備えており,社内ネットワークと接続可能だ。入退室履歴をパソコンから CSVファイルとしてダウンロードできる。
入退室管理用に利用しているアートのFeliCa対応リーダー「NW-L10」 | タイム・レコーダー用に活用中のドコモ・システムズのFeliCa対応リーダー「WB-1」 | |
写真2●携帯電話のFeliCa機能を活用 N902iLのFeliCa機能をサーバー室への入退室管理(左)や社員のタイム・レコーダー(右)に応用。同社自らFeliCa対応リーダーなどの機器を調達して,自前でシステムを構築した。 |
社員のタイム・レコーダー用にはドコモ・システムズのFeliCa対応リーダー「WB-1」を導入した(写真2右)。勤怠管理システムには,ソニーの法人向けASPサービス「インターネットタイムレコーダー」を採用。FeliCaカードをWB-1にタッチするとネットワーク経由でその情報がASPサービスに送られ,一括管理できる仕組みだ。利用料は1ユーザー当たり月額525円という。
システム・インテグレータに頼らずに,独自にシステムを構築することは,同社の持っている社風のようだ。「かつては独自に社内にメール・サーバーを立てて,電子メール・システムを運用してきた。(自前で構築したシステムが)いつのまにか仕事に欠かせないシステムになることが多い」と小島部長は語る。
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