電信電話工事協会が2008年7月29日に開催する「第4回光通信工事技能競技大会」に向け、研修施設で作業ノウハウを磨く日本コムシスの技術者たち
電信電話工事協会が2008年7月29日に開催する「第4回光通信工事技能競技大会」に向け、研修施設で作業ノウハウを磨く日本コムシスの技術者たち。社内大会の種目別優勝者である4人が約2週間の合宿で他流試合への英気を養っている
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 NTTなどを取引先に持つ情報通信工事会社大手の日本コムシスが、社内外の技能競技会をテコに、ノウハウ伝承を強化している。

 2008年7月14日。4人の技術者が2週間の合宿に集まった。目的は電信電話工事協会が7月29日に主催する「第4回光通信工事技能競技大会」への出場に備えて、工事作業の腕を磨くこと。19社の情報通信工事会社が参加する他流試合に臨むためだ。

 この4人は、同大会に先立ち開催した6月7日の社内競技会の「光アクセス地下設備施工競技」「光アクセス架空設備施工競技」「Bフレッツサービス開通競技」「女性選手によるBフレッツサービス開通競技」部門の優勝者たちである。関連会社も含め約2500人いる中から総勢75人が社内競技会に出場して腕を競い、この4人が勝ち残った。

 今回の4選手は社外大会の終了後も頻繁に、この研修センターに足を運び、講師として全国の技術者にノウハウを伝達する役割を担う。

足の引っ張り合いでない競争意識が大切だ

 日本コムシスにとって、社内競技会は単なるコンテストではない。優れた作業ノウハウを水平展開するマネジメントの柱と位置付けている。社内競技会を開始したのは2005年。電信電話工事協会の光通信工事技能競技大会が始まるのに合わせて開催した。「業界内で競う大会をするなら社内大会が必要だし、社内大会をすれば優れた作業ノウハウを水平展開するのに役立つ、と考えた」(同社の末広政雄NTT事業本部アクセスシステム部アクセステクニカルセンタ担当部長)

 4種目とも競技中は1選手に1人の審査員が付き、細かな作業プロセスを何項目にもわたってチェックする。種目ごとに標準作業時間を決めておき、標準時間よりも早く作業を終えることができれば加点される。一方、光ファイバーケーブルを踏みつけるなどの作業ミスがあれば減点される。

 例えば、マンホール内での工事作業を想定した「光アクセス地下設備施工競技」では、NTT設備から来たケーブルと個人宅から来たケーブルを接続する。水で濡れないように細心の注意を払いながら接続部分を専用部材で密閉する必要がある。

 「光アクセス架空設備施工競技」はこれと同様の作業を、電柱の上で実施すると想定したもの。足場が不安定で限られた状況で、いかに素早く、かつ、丁寧に作業をするかがポイントになる。

 地下設備施工も架空設備施工も、多重ケーブルをばらしたり、切断したり、接続したりするなど繊細な作業を2時間近く続ける集中力が求められる。多数の作業道具を工具入れにどう詰め込むかによっても、作業効率は大幅に向上する。

 「Bフレッツサービス開通競技」は、電柱と個人宅をケーブルで結び、そのケーブルを宅内に引き込み、光コンセントを作り、パソコンとIP電話機を接続させる、という一連の作業を競う。作業時間はおおむね30分間なのでほかの2競技よりも短いが、お客様の目に直接触れる作業なので仕上がりのきれいさが欠かせない。また、主に1人暮らしの女性のお客様からの要望が高まっているので、女性選手だけが競う種目を2008年から追加した。

 社内外の競技会を3年以上継続してきたことによって、技術者の仕事に対するモチベーションやプライドが高まってきた。「ここだけには負けたくない、という良い意味での競争意識が現場に芽生えた。社内での足の引っ張り合いでない競争意識こそが、業務改善活動を継続させる大きなポイントだと感じている」と末広アクセステクニカルセンタ担当部長は語る。