東京・恵比寿にあるウェスティンホテル東京が、客室用の高級オリジナルベッドを一般顧客向けに外販する事業を着実に伸ばしている。同ベッドは1台25万円以上と高価なのにもかかわらず、2007年は250台を販売。2008年はさらに50台増えて、300台を販売する見通しだという。

 250~300台というと、小さなホテルを1棟建てるのに必要なベッド数に相当する。国内のホテルが、客室で使う業務用高級ベッドをこれほど多く外販した例は過去になく、業界関係者から注目を集めている。

 このベッドは「ヘブンリーベッド」と呼ばれている。「雲の上にいるような寝心地」をコンセプトに、米ウェスティンホテルとベッドメーカー大手の米シモンズが共同開発し、国内ではウェスティンホテル東京と日本のシモンズ(東京都港区)が提携して生産している。国内のウェスティンでは全室に導入済みで、開業ラッシュが続くほかの高級ホテルとの大きな差異化要因になっている。ヘブンリーベッドを気に入って、ウェスティンでの宿泊を指名してくる固定ファンがつき始めているほどだという。

 ウェスティンが国内でヘブンリーベッドの設置を開始したのは2002年だが、翌2003年には2~3人の宿泊客から「ベッドが気に入ったから、個人的に売ってほしい」と要望があった。当初はホテルでベッドを入れ替えるタイミングに、購入を希望する顧客の分まで発注して販売した。年を追うごとに口コミで購入希望件数が増えていったため、2005年からは在庫用の倉庫を借りて、数日以内に販売できる体制を整えた。保管スペースがかさむベッドを販売用にわざわざ在庫しておくこと自体、ホテル業界では異例の取り組みだという。

 ウェスティンにとってヘブンリーベッドの販売は利益目的ではなく、あくまでも顧客満足度の向上が狙いである。自宅でヘブンリーベッドを使っている人は旅先でも同じベッドに寝たいと考えるはずなので、ベッドを購入した顧客がウェスティンのリピーターになる効果を期待しているという。

 ヘブンリーベッドはウェスティンのオンラインショップで購入できるほか、2007年からは三越でも購入できるようになっている。