中国人向けの化粧品クチコミサイト「美優網/BeauBeau(ビュービュー)」(写真上)。同サイトは三井物産やアイスタイルなどが出資するビューネット・メディア・コンソーシアム(上海市)が運営する。ビューネットは、上海市と北京市の大企業が多いビジネス街のオフィスビルを中心に美容雑誌「美優」を無償で提供する事業も手掛け、クチコミサイトとのクロスメディア戦略を推進している(写真下)
中国人向けの化粧品クチコミサイト「美優網/BeauBeau(ビュービュー)」(写真上)。同サイトは三井物産やアイスタイルなどが出資するビューネット・メディア・コンソーシアム(上海市)が運営する。ビューネットは、上海市と北京市の大企業が多いビジネス街のオフィスビルを中心に美容雑誌「美優」を無償で提供する事業も手掛け、クチコミサイトとのクロスメディア戦略を推進している(写真下)
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 ビューネット・メディア・コンソーシアム(上海市)が運営する中国人向けの化粧品クチコミサイト「美優網/BeauBeau(ビュービュー)」のクチコミ情報数が2008年6月に10万件を突破、同月末に11万件に到達した。美優網の開設は2007年1月。三井物産やアイスタイル(東京都港区)、三菱UFJキャピタルなど多数の日本企業が出資してビューネットを設立した。

 同社の北野貴宗CEO(最高経営責任者)は、「中国の化粧品クチコミサイトの中で投稿数が最大規模になった。2008年度内に50万件を目指す」と意気込む。今年度に広告収入だけで1億円を超す見通しで、これは物価などの違いを考慮すると日本の5億円に相当するという。

 本家のアイスタイルが日本で展開中の化粧品クチコミサイト「@cosme(アットコスメ)」のクチコミ数600万件超に比べれば規模はまだ小さい。それでも、ここ半年間ほどの利用の伸びに自信を深めている。「中国は超格差社会なので、会員とクチコミの質にこだわったところ、当初はどうしようかと思うくらい利用が増えなかった。だが2007年10月ころから加速度的に登録会員数やクチコミ数、ページビュー(PV)数が伸びてきた」とビューネットの北野CEOは明かす。

 美優網の登録会員数は現在4万6000人で、月間PV数は600万以上。8割以上の会員が20代で、23~27歳の女性が多い。美優網のコアターゲットは月収5000元(約8万円)以上で美容への関心が高く可処分所得も高い女性。実際、7割強の会員が月収3000元(約4万8000円)以上となっている。

 美優網では、中国で販売されている欧米や日本、中国の350ブランド・1万点の商品を紹介しているが、特に人気が高いのは日本の化粧品の情報である。そこで2008年6月から、日本製品を中心に化粧品を販売するサイト「美優販売店/BeauBeau Store(ビュービューストア)」もオープン。2006年まではソニーグループ会社だったB&Cラボラトリーズ(東京都品川区)の美容石鹸を扱い出した。

 美優販売店は、広大な中国にリスクを抑えて効率良く進出できる“場所”として、日本の化粧品メーカーにとっても魅力的な選択肢である。「中国人の間で、日本の化粧品は品質の良い高級品として人気が高い。ところが中国で購入できる正規品は種類が少ない。というのも、日本の化粧品メーカーが中国に単身で乗り込んで販売網を築くのは難しいし、現地企業と提携しようにも誰を信じてつき合ったらいいかが分からないからだ。しかも、まだ百貨店での対面販売が大半で、セルフ販売のドラッグストアがほとんどない」(北野CEO)

クロスメディア戦略でアッパー層をつかむ

 今のところ美優網に掲載されたクチコミ情報はすべて、中国人読者が投稿したもの。美優網のデータベースシステムはアットコスメを手本に開発したものなので、翻訳さえすれば、アットコスメのクチコミ情報を簡単に美優網に転載できるが、あえて実施していないという。化粧品に対するニーズや感覚が日本人と美優網の現時点でのコアターゲット層の間でかなり違う、と分析しているからだ。

 「日本は成熟市場で機能別に多様な商品が手に入るが、中国はまだ商品数が少ない上、1つの商品にたくさんの機能を求める人が多い。また、日本人が良いと感じる『しっとり感』と中国人の『しっとり感』に違いがあったり、日本人が『ナチュラルさが良い』と感じても中国人は『薄すぎる』と感じたりする」と北野CEOは説明する。

 3~5年後には、本家の日本で膨大な口コミ件数を持つ強みが生きてくる可能性が高い。「中国国家統計局によると、中国の化粧品市場は2011年に現在の約2倍の2兆2651億円になり、日本の市場規模を追い抜く。ニーズが多様化し、日本人のクチコミ情報を魅力的に感じる中国人の絶対数も増えるかもしれない。ただ、現段階では時期尚早ということだ」(北野CEO)

 ビューネットのビジネスモデルには、もう1つ武器がある。上海市と北京市の大企業が多いビジネス街を中心に毎月17万部を配布する無料の美容雑誌「美優」や、高級ヘアサロン向けの有償誌「絲路」など紙のメディア媒体だ。美優の無料配布が美優網の会員数を増やす土台となった。雑誌制作のノウハウは、可処分所得の多いアッパー層向けのコンテンツ作りにも役立つうえに、化粧品メーカーに対してサイトと雑誌のクロスメディアで広告出稿サービスを売り込める相乗効果もある。

 1970年生まれの北野CEOは、電通と米ヤング・アンド・ルビカムの合弁会社、電通ヤング・アンド・ルビカム(東京都港区)の出身。「伝統的な広告代理店での経験が、企画力と遂行力を身に付けるのに役立った」(北野CEO)という。