カゴメラビオの三輪克行社長(写真右)と岩瀬雄一品質保証部長(写真左)
カゴメラビオの三輪克行社長(写真右)と岩瀬雄一品質保証部長(写真左)

 カゴメの子会社で乳酸菌飲料「ラブレ」などを生産するカゴメラビオ(愛知県小牧市)は2007年度の1年間、製造時の原材料の投入ミスを1件も発生させないことに成功した。投入ミスゼロの記録は現在も続けている。年に4件発生した2005年度と比較すると、原材料費のロスをなくした分だけで約500万円のコスト削減効果を得た。

 原材料の投入ミスを撲滅できた背景には、2007年4月に製造管理システムを本格稼働させたことが挙げられる。このシステムは作業手順を順番に案内するナビゲーション機能を備えているのが特徴。導入に当たっては、現場担当者たちが話し合いながら、従来の作業手順の見直しを実施。ミスが起こりにくいように改良した手順をシステムに組み込んだ。

 作業手順を見直した例としては、温度などの計測作業をシステムで自動的に実施できるようにして、データの正確性を高めたことがある。従来は人手で計測していたため間違いを起こしやすく、現場の担当者は緊張を強いられていたという。間違いを防ぐためにチェック専門の担当者を別に配置するなど、業務効率の面でも問題があった。

 一連の施策によって、システム画面が示す通りに作業を進めれば、品質の高い製品が完成するようになった。現場担当者が安心して作業に取り組めるようになり、ミスの追放につながった。システム導入に携わった岩瀬雄一品質保証部長は「担当者が安心感を持って作業に取り組めることで、業務の能率が高まる効果も生まれた」と語る。実際に、従業員の数は従来と同じだが、平均残業時間が短くなったという。

ポジティブリスト制度対策で導入を決断

システム画面を確認しながら作業する現場担当者
システム画面を確認しながら作業する現場担当者
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 このシステムを導入したきっかけは、三輪克行社長が「原料の品質情報や商品の出荷先のトレーサビリティー・システムを確立しなければ、今後は消費者に受け入れられなくなる」と危機感を抱いたことだった。2006年に、基準が設定されていない農薬などが一定量以上含まれる食品の流通を原則として禁止する「ポジティブリスト制度」が施行されたことなどを受け、食品メーカーが管理すべき情報が膨れ上がっていた。

 そこで三輪社長は、カゴメに在籍していた時期に取引していた横河電機に声をかけ、トレーサビリティー・システムの構築に対する協力を依頼した。横河電機からはトレーサビリティーの確保だけでなく、業務効率化にもつながるシステムの提案を受け、話がまとまった。「原材料コストの削減効果から判断すると、そう遠くない時期に投資の回収もできる」。こう話すように、システムの導入効果に対する三輪社長の満足度は高い。