JR新宿駅の駅ビル「ルミネエスト新宿店」内にある化粧品専門店「@cosme store(アットコスメストア)」
JR新宿駅の駅ビル「ルミネエスト新宿店」内にある化粧品専門店「@cosme store(アットコスメストア)」
約600万件の口コミ情報を掲載している化粧品コミュニティーサイト「@cosme」を運営するアイスタイルが、化粧品専門店チェーンのたしろ薬品と共同で立ち上げた
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 登録者数100万人を超す国内最大級の化粧品口コミサイト「@cosme(アットコスメ)」を運営するアイスタイル(東京都港区)が2007年3月5日にオープンした化粧品専門店の業績が好調だ。

 「@cosme store(アットコスメストア)」という名称の店舗はJR新宿駅の駅ビルの1つ、ルミネエスト新宿店内にある。2008年3月期決算で、目標としていた3億5000万円の売上高を上回る4億3000万円を記録した。

 初年度の目標数値はアットコスメストア事業で資本提携しているたしろ薬品(神奈川県横浜市)と協議し、月間の坪当たり売上高を45万円と想定して算出したものだ。たしろ薬品は横浜市と都内で5つの化粧品専門店を運営しているが、そのなかの1つはJR新宿駅の別の駅ビル内にあり、駅ビルでの店舗運営ノウハウに長ける。

 アットコスメストアが予想以上に好業績だった要因は、毎月約245万人もの消費者が閲覧して累計約600万件の口コミ情報を掲載してきたアットコスメの知名度が、集客力を高めた点にある。実際、アットコスメストア来店客の半数はアットコスメの利用者だった。

クチコミランキングで商材と棚割を決めた

 アットコスメストアと通常の化粧品専門店の違いは既存の枠を超えた品ぞろえにある。一般的な化粧品専門店が扱う商品に加え、口コミランキングの上位商品、さらに化粧品販売サイト「cosme.com(コスメコム)」で扱う商品も販売する。消費者はアットコスメストアに来さえすれば、複数の化粧品販売店を歩き回った時と同じだけの商品や情報を手に入れられる。

 大手化粧品メーカーの商品のなかには、専門店向け、ドラッグストア向け、百貨店向けなど販売チャネル別に特化したブランドも少なくない。また、日本には地方の小売店でしか入手できない中小メーカーの化粧品も多数存在する。今回の店舗ではアットコスメで口コミ人気の高い商品をできる限り店頭に並べるようにした。人気があっても仕入れにくい商品はテスターを置き、店員が周辺で購入できる販売店を紹介している。

 消費者の口コミ情報を簡単に閲覧しやすくしてある点も、アットコスメストアの特徴だ。例えば、アットコスメで人気の商品を「マスカラ」「ファンデーション」などカテゴリー別にまとめて陳列し、ブランド横断で商品を比較できるようにしている。また、「美白」「保湿」など消費者の悩みやニーズをテーマとしたランキング陳列コーナーも設けた。

 アットコスメストア店内には、アットコスメを閲覧できるパソコンを多数設置。商品周辺には口コミ情報を書き込んだPOP(店頭販促)広告を配するなど、ランキングを意識させる仕掛けが様々な形で施してある。このほか、「おサイフケータイ」機能を持つ携帯電話を近づけると画面にランキングを表示させるICチップリーダーも設置した。

「真の狙いは単なる店舗の成長ではない」

「アットコスメのクチコミ情報と連動させた店舗を全国の政令都市に作りたい」と語るアイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEO
「アットコスメのクチコミ情報と連動させた店舗を全国の政令都市に作りたい」と語るアイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEO

 アイスタイルの吉松徹郎代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)は「実は、全国の小売店のPOS(販売時点情報管理)データによる化粧品売り上げランキングと、アットコスメの口コミランキングは連動性が低い。小売店は利益率が高く、仕入れやすく、店頭に並べやすい商品を売ろうとしがちで、消費者のニーズとは必ずしもマッチしないからだ」と明かす。

 このため、POSデータだけを参考に新製品を開発しても、予想したほど売れないケースが少なくない。そこで、アイスタイルに口コミ情報の詳細な分析を依頼する化粧品メーカーが増えている。まただからこそ、アットコスメストアのように口コミを重視した品揃えの化粧品専門店に多くの消費者が足を運んだと分析できる。

 「アットコスメなど口コミサイトの影響で、最近は消費者のほうが店員よりも化粧品に詳しいケースも多い。店員は店舗業務で忙しく、特定の化粧品メーカーから直接もらう情報しか持っていないからだ。アットコスメストアの店内の様々な仕組みや品ぞろえは、店員の情報レベルの向上にもつながる」と吉松CEOは補足する。

 吉松CEOは3年後までをめどに、アットコスメストアのようにクチコミを活かした店舗を各政令都市に計10店舗作る意向だ。その背景には、化粧品メーカーと共存共栄していきたいという狙いがある。

 「全国への出店によって、地方ごとの消費者特性を加味したマーケティングや商品開発のノウハウを得られる。しかも、アットコスメのクチコミ情報はユーザー属性や他社商品との兼用率などによって詳細な分析が可能となる。こうしたノウハウや情報を提供すれば、化粧品メーカーは消費者主導のものづくりを実践できる」と吉松CEOは語る。

■変更履歴
上から5段落目の文中に「cosme.com(コスメドットコム)」という表記が出てきますが、正しくは「cosme.com(コスメコム)」でした 。[2008/07/02 15:00]