「ビーシーアミ プレム」などのブランドで展開する婦人服の製造,卸,小売を手がけるビスケー(本社:東京都世田谷区)は2008年3月,内線網を刷新した。それまで使用してきたビジネスホン・システムの老朽化に伴うもので,モバイル・テクニカのIP電話用アプライアンスで置き換えた格好だ。建物の中を動き回る社員が連絡を取りやすいよう工夫した構成になっている。

館内放送で館内のどこかにいる社員を呼び出し

 ビスケーは東京に本社と物流拠点2カ所,神戸に営業所を持っており,このほかに全国の百貨店内に25カ所の小売店を持つ。IP電話導入は本社と物流拠点,営業所が対象だ。

 同社は今回,本社にIP-PBXアプライアンスの「mCube」を1台,「vCube」を2台,「xCube」を1台設置。神戸には「xCube」を1台設置した(図1)。xCubeはIP-PBX機能と外線接続機能を兼ね備える装置,mCubeはIP-PBX専用でxCubeよりも多くの同時通話数を扱える装置,vCubeは外線接続専用の装置である。mCubeとxCubeは,オープンソースのIP-PBXソフトであるAsteriskをベースにしている。

図1●ビスケーが導入したIP電話の概要
図1●ビスケーが導入したIP電話の概要
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写真1●館内放送による呼び出しに使うスピーカー
写真1●館内放送による呼び出しに使うスピーカー
以前から有線放送用に設置していたスピーカーを共用する
 東京にはIP-PBX機能を持つ装置が2台ある形になるが,xCubeはメインのIP-PBXではなく館内放送用。かかってきた電話をパーキングしてピックアップするのではなく館内放送で流すことで呼び出し,電話を受ける社員が近くのIP電話機で取れるようになっている(写真1)。

 IP電話機は3拠点でおよそ70台。ほとんどはサクサの「IP NetPhone SX」で,6台はモバイル・テクニカの無線IP電話端末「MobbyTalk253」にした(写真2)。これは「担当者が洋服の在庫のそばに行き,商品をみながら顧客と会話できるようにするため」(企画部の永井勝マネージャー)である。

写真2●固定型IP電話機はサクサの「IP NetPhone SX」(左),無線IP電話はモバイル・テクニカの「MobbyTalk253」(右)を採用した
写真2●固定型IP電話機はサクサの「IP NetPhone SX」(左),無線IP電話はモバイル・テクニカの「MobbyTalk253」(右)を採用した

 拠点はいずれも,NTT東西地域会社のBフレッツでネットワークに接続し,本社と物流拠点はNTT東日本のVPNサービス「フレッツ・グループアクセス」で結んだ。神戸のxCubeは本社とは独立して使い,物流拠点のIP電話機は本社のIP-PBXを使用する。

 外線発信には,東京はNTT東日本の「ひかり電話ビジネスタイプ」,神戸はNTT西日本の「ひかり電話オフィスタイプ」を採用した。東京は電話番号を11番号取得し,同時12チャネルで利用している。神戸は2番号,同時4チャネルである。

費用はビジネスホンの2分の1,工事費の差が大きかった

 刷新前に同社は,東京の3拠点と神戸のすべてにビジネスホン主装置を導入し,運用してきた。拠点間の通話は外線経由である。しかし2007年に,主装置が約1時間使えなくなってしまったことがあった。故障ではなくまた使えるようになったが,電話まわりを任せている業者にその件を相談したところ,主装置の部品の確保が難しくなりつつあることが判明。入れ替えを決断した。

 ビジネスホンを新しくする見積もりをとったところ,主装置が2台,ビジネスホン電話機80台の構成と工事費で約2000万円。本社のネットワーク構成が複雑な構造になっており,これを整理する必要があるなどの理由だったが,高額であると判断して見送った。

 その頃,同社と付き合いがあった業者のご紹介でモバイル・テクニカを紹介されたという。同じ構成で見積もりを取ったところ,同じ規模で半額以下の900万円弱で構築できると分かり,採用を決めた。永井マネージャーは,「ビジネスホンとは工事費の差が大きかった」と振り返る。製品提供のほかインテグレーションもモバイル・テクニカが担当した。

小売店のIP電話化はこれから検討

 今後の検討課題としては,直営店を内線化することと,営業担当者が出先から内線をかけられるようにすることを挙げている。本社や物流拠点と小売店との間は現在,外線発信で運用している。店舗で無線IP端末を使うことを考えたが,買物客から携帯で私用電話をしているように見られるのではないかとの懸念があり,実現は難しいという。それに代わる方法を今後模索していく。(山崎 洋一)