岩手県の地方百貨店、川徳で執行役員と務める菊池政四カード・システム部長
岩手県の地方百貨店、川徳で執行役員と務める菊池政四カード・システム部長
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 岩手県の地方百貨店・川徳(盛岡市)が他地域の地方百貨店にシステム面での連携を呼びかけている。同社は木綿商として創業し140年の歴史を持つ地場の百貨店で年商は276億円(平成18年度)規模。2004年3月からIT(情報技術)ベンダーのアイティフォーと共同開発した百貨店向けパッケージ・ソフト「RITS」(リテール・インフォメーション・テクノロジー・フォー・ストラテジック・マネジメント)を運用している。他地域の地方百貨店にも導入してもらい、新しい機能を追加する際の費用を折半したり、活用について情報交換したりしてIT投資の抑制を図る。

 川徳以外では2007年3月に丸栄(名古屋市)が導入済みだ。2008年4月にヤマトヤシキ(兵庫県姫路市)も採用を決定し、2009年2月の稼働を目指している。3社は「RITS地方百貨店システム連合」を結成し、今後は定期的に情報交換を行う。

 川徳でCIO(最高情報責任者)を務める、執行役員の菊池政四カード・システム部長は「地方の百貨店は財力が無い。システムを刷新したくても単独では負担が大きい。我々は大手百貨店が使う、ブルドーザーのようなシステムはいらない。規模に合ったソフトを使って、運用面で智恵を出し合えれば」と語る。

 川徳もRITS導入前は大型コンピュータをベースにした基幹システムを使っていた。当時は夜間バッチの処理のために9人いたシステム部門の社員のうち1人が常に残業していた。リアルタイムで処理していなかったので新商品を投入する際には3日前に商品情報を登録する必要もあった。「運用にかかる費用も下げたかったし、リアルタイムで売り上げの動向を見られる体制にしたかった」と菊池部長は振り返る。

 そこで、注目したのがコンビニエンスストアやネット証券らが採用しつつあったオープン系のシステム。大型コンピュータに比べて必要なアプリケーションを随時追加しやすい。川徳とアイティーフォーでは最初から同業他社にも使ってもらえるパッケージ・ソフトの開発を目指した。「川徳独自の商習慣があるので運用面では自由度を残しつつ、ほかの地方百貨店が導入できるよう設計した」(アイティーフォー)
 
 結局、川徳はハード、ソフト両面合わせて10億円を投じたが「大型コンピュータでの構築費用のおよそ半額」(菊池部長)で済んだ。システム部門の社員は5人に減り、業務も運用・保守より企画面に時間を避けるようになった。

 今後はシステム連合に1年に2社程度の加入を目指していく。国内には60社以上の地方百貨店があり、大手百貨店の進出に対する共同戦線になる。