高島屋の鈴木弘治社長が2008年3月に、2008年度(2009年2月期)の営業戦略として掲げた「最強の販売体制」作りの詳細が明らかになった。

 まずは、購買履歴を分析して顧客を分類しつつ、固定客を育成する活動に取り組み始めた。これに併せて店長への人事評価も変更した。さらに、同年9月をメドに、得意客の購買動向をベースにして店頭の品ぞろえも見直していく方針だ。

 同社がここに来て、情報活用を強化している背景には、同社が発行するクレジットカードのレジ通過率が2008年に50%を超えて、分析に必要な情報を蓄積しやすくなったことがある。そこでまず2008年3月に「アクションシステム」とよぶ仕組みを稼働させた。各売り場ごとに、前年の購買履歴などの情報を分析し、顧客を「上顧客」「育成傾向(上顧客になる可能性がある顧客」「離反している顧客」などに分類する。この情報分析に当たっては、同じく同年3月に設置したCRM室が、売り場の特性に応じた顧客の分類パターンを作成するなどして各売り場を支援する。

 そして、各売り場ごとに、上顧客へのフォローや、上顧客を増やす計画を立案させる。例えば、上位顧客の顔と名前を店員に覚えさせる、ジャケットを購入した上顧客にはネクタイやシャツをお勧めする電話やダイレクトメールを発信するなどだ。こうした取り組み度合いを店長の評価項目にも組み入れることにした。新POSシステム導入委員会専任担当の津積誠部長は「責任者から意識を変えてもらうために入れた。売り上げ以外の項目が入るのは初めてのこと」という。

 同年9月には商品情報と顧客情報を横断して分析できる仕組みを導入する。これまでは別システムであったため、クレジットカードの履歴から「ジャケット」「ネクタイ」といった購入品目は把握できても、上得意客が具体的にどんなブランドを好むのかなどは、直ちに把握できなかった。今後は顧客の属性別や店舗別など複数の条件を組み合わせた分析もできるようになる。こうした品目を把握して、店頭の品ぞろえに反映させていく。

 情報分析の強化に備えて、店に駐在するバイヤーも増やしたという。データだけをうのみにせず、売れ筋を肌で感じてもらうためだ。「なぜ売れているのかを、情報に加えて現場を観察することで追加発注の決断を早くするといった効果を期待している」(津積部長)と話す。

 情報分析の強化などに伴うCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)関連のIT(情報技術)は2008年度で26億円を計画している。