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事例データベース

エステー
IT駆使し店頭支援を強化、陳列棚の画像や地図情報を活用

上木 貴博=日経情報ストラテジー 2008/06/12 日経情報ストラテジー
出典:日経情報ストラテジー 2008年3月号148ページより
(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
目次一覧

消臭芳香剤・防虫剤大手のエステーが店頭支援の仕組みを強化している。まず2005年末に設立した子会社で2006年に店頭支援の専任組織を作った。カメラ付き携帯電話で商品棚の情報を集める仕組みを2006年1月に導入した。優れた陳列や店頭プロモーションの事例はすぐに横展開されるようになった。ある支援店では半年間で18%売り上げが増えるといった事例が出ている。

 「消臭力」や「脱臭炭」といった消臭芳香剤、除湿剤などを手掛けるエステーが2006年から店頭支援の体制を大幅に強化している。

 新光証券の企業投資調査部アナリストの鈴木克彦氏は「エステーは花王やP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)といった大手や、消臭剤市場で競合する小林製薬と比べてこれまで店頭支援の活動は遅れていた。現状でもマンパワーはまだ見劣るが、システム活用を軸に新しい仕組みを作る姿勢は評価できる」と話す。

 体制強化の主役は、2005年末に設立したエステービジネスサポート(SBS)の契約社員だ。商品棚に試供品を取り付けたり、POP(店頭販促)広告を張ったり、手前の商品が無くなっている棚では奥の商品を前に出したりといった作業に当たる。

 SBSが営業を開始する以前のエステーでは店頭支援を行うフィールドスタッフは営業支店ごとに採用されていたので、フィールドスタッフが所属していない支店もあった。同社設立を機にフィールドスタッフは23人から47人と倍増し、情報を共有するIT(情報技術)の仕組みを導入。これによって、店頭状況を本社が把握し、新製品の陳列などをいち早く仕掛けられる体制が整ってきた。

エステービジネスサポートの岡田章一社長(左)と営業推進グループの馬場和久サブマネージャー(右)
エステービジネスサポートの岡田章一社長(左)と営業推進グループの馬場和久サブマネージャー(右)
 
エステーの主力商品。2007年8月に「エステー化学」から社名変更した
エステーの主力商品。2007年8月に「エステー化学」から社名変更した

 通常、1人が1日3~4店を巡回し、1カ月で担当分の50~60店舗に顔を出す。カバーしている小売店の数は、フィールドスタッフと社員で合わせて 4000店。取り引きがある店の8割に達した。「ほかのメーカーとの関係が強かったり、店頭支援を好まなかったりする企業もある。回るべき店舗には行けるようになった」とSBSの岡田章一社長は語る。

 ドラッグストアやスーパーといったエステーの販売チャネルの陳列棚をめぐる競合は激化する一方だ。もともと、エステーの主力製品である消臭剤や脱臭剤、除湿財は生活必需品ではなく、ほかの商品の“ついで”に買われていくケースが多い。顧客が陳列棚を通りかかった時に、目に止めてもらえるかどうかが非常に大事だ。営業本部営業推進グループの馬場和久サブマネージャーは「陳列される商品の数、店頭での販促施策、テレビCMの積が売り上げになる。店頭を基準に営業を見直すようになってきた」と話す。それだけに、実際に店頭を回る活動強化がかねてから課題だった。

 エステーの小林寛三社長はCMと店頭を連動させることで効果的な販促につなげる戦略を指示している。ユニークなテレビCMを流しても、小売り店が新製品をすぐ陳列してくれなければ意味が無いからだ。しかし、小売りチェーンの中には営業時間を深夜まで延長したり、新店の出店に忙殺されているといった事情で、本部から店舗への指導が手薄になっているところもある。望むように陳列してもらうには自分たちで店を回るしかない。

営業担当者は分析に専念

 その一方、店頭支援を兼任しているエステーの営業担当者側では商品棚をチェックしたり、飾り付けたりといった作業をする時間が減ってきたことも専任組織設立の背景にあった。営業部隊は「営業イノベーション」というかけ声のもと、小売り業からもらうPOS(販売時点情報管理)データの分析や店頭プロモーション企画の提案といった内勤業務を重視しつつある。

 それでも、SBSが抱えるフィールドスタッフの人数は、新光証券によれば競合メーカーの半分程度だという。そこでマンパワーの不利を補える仕組みが、 2006年から活用している「システム1010(テントウ)」だ。2006年の初めから試験的に利用を開始した。携帯電話を使って店頭の様子を撮影して、画像を業務報告とともに同システムに送信する。営業担当者は、システム上で報告を確認できる。デジカメ画像を柔軟に扱えるようになったことで、ノウハウの共有が進んだ。フィールドスタッフに供与する携帯電話のカメラは200万画素で、店頭の様子を十分に撮影できる。

●組織改変と同時に行ったシステム導入が功を奏した
●組織改変と同時に行ったシステム導入が功を奏した
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ノウハウを横展開

 以前は、フィールドスタッフはファクスや郵便で報告を送ったり、週に1回の会議で報告したりしていた。陳列状況の画像は使い捨てカメラで撮影し、現像してから提出するといった具合だった。新製品の陳列が思い通りに進んでいるかどうか、確認するにはリアルタイム性に欠けていた。

 カメラ付き携帯電話によってシステム1010への入力を行うフィールドスタッフは、情報機器の操作に熟練していない主婦がほとんど。だが、受け入れられやすいよう操作方法を工夫した。業務内容の報告は文字入力ではなく選択式を中心としている。

 営業担当者は、これらの情報を企業、地域、売り上げ規模、フィールドスタッフごとに検索できる。「最近売り上げが伸びている企業の商品棚」「売上高との相関が高いフィールドスタッフ」を調べることも容易だ。

 システム1010の稼働後は、店頭支援活動の好事例を「FS活動 TOPICS集」として印刷・配布している。例えば、近くにペットの飼育が可能なマンションが建てられるとペット用消臭プラグの売り上げが伸びる。こうした際にペットフードと一緒に陳列して成果を上げた写真が紹介されている。

店頭支援の作業後に商品棚を携帯電話のカメラで撮影するエステービジネスサポートのフィールドスタッフ(左)。簡単な操作で報告を「システム1010」に入力できる(右)。写真は1度の報告に4つまで載せられる
店頭支援の作業後に商品棚を携帯電話のカメラで撮影するエステービジネスサポートのフィールドスタッフ(左)。簡単な操作で報告を「システム1010」に入力できる(右)。写真は1度の報告に4つまで載せられる
写真撮影:いずもと けい

 2007年6月には重点商品や季節商品の販促施策を掲載した「おすすめPOP集」も配布を始めた。例えば最新号にはマスクのPOPとして、「ノロウイルスに注意」「花粉対策」といった時候に合わせたものを載せている。

 データベースに整理されて蓄積されるプロモーションや棚作りの写真はそのまま営業担当者の優れた商談材料になる。消費者をとらえたPOPや陳列方法を実績とともに紹介できるからだ。新システムにより売り上げという数字が店頭プロモーションや商品棚の様子を撮った画像と結び付けられた意味は大きい。「当社はきちんと店頭支援をやっていますよ」と小売りチェーンのバイヤーにアピールする材料にもなる。

半年で18%売り上げが増加した例も

 システム1010はその後も改良を進めている。2007年4月に地図情報分析ツールが追加された。エンド(商品棚の端)企画の売り場面積に占めるシェアや、巡回した回数、昨年度の実績の円グラフなどを地図上に重ねて表示できるようになった。「報告された情報をよりビジュアルに把握できる」(営業推進グループの玉木弦士氏)

地図機能は営業戦略の立案にも使える
地図機能は営業戦略の立案にも使える

 地図情報はフィールドスタッフの巡回コースの最適化にも役立つ。シェアや売り上げが地図上に記されていることで、苦戦している店舗から重点的に回るといった段取りを考えやすくなった。

 かつてエステーのCIO(最高情報責任者)的な役割を務めたこともあるSBSの岡田社長は「システム1010は単なる効率化ツールではなく、店頭支援に新たな付加価値を生んでいる。営業担当者はより深い分析ができるようにもなった」と話す。

 SBS設立から2年近くたつが既に成果は見えてきた。もともとフィールドスタッフがいなかった大阪支店では、SBS設立後に8人が店頭支援業務に加わった。半年間でエステー商品の売り上げが4%増えた小売りチェーンにおいて、誰も巡回していない店舗とフィールドスタッフが定期的に店頭支援している大阪地区の店舗を比べたところ、前者では1%、後者では18%の売り上げ増と大きく差がついた。

 さらに以前は発売後に主要な小売店に新製品を並べるまで4週間かかっていたところを3週間へと短縮できた。新商品の宣伝を見た消費者が店頭で手に取れないという事態は減っている。

 SBSを設立した直後には社内の営業担当者から、実は一部不満の声もあったという。フィールドスタッフが各営業所直属からSBS所属に変わったことで、フィールドスタッフへの指示が直接できなくなったからだ。

 だが、SBSが作ったシステム1010によって営業担当者とフィールドスタッフの情報共有はむしろ以前より進んだ。同社は今後もシステム1010に機能を付加して効果的なPOPの共有などを進めていく予定だ。

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