医薬品卸の東邦薬品がICタグを活用して誤出荷を無くす課題に取り組み、大きな成果を上げている。同社が2006年末に新たな物流センターとして稼働させた「TBC東京」で、800個の「光る無線ICタグ」を導入。稼働から1年以上が経過したが、これまで大きなトラブルはなく、病院や医療機関の注文通りに医薬品を東邦薬品の営業拠点まで出荷できたかどうかを測った数字で99.9997%という高い出荷精度を達成している。

かごのICタグが光って、出荷すべき品目を作業員に知らせる

ICタグが緑色に光っているかごの中身だけを、コンベヤーで流れてくる青い箱に詰め替えれば誤出荷の人為的ミスは防げる
ICタグが緑色に光っているかごの中身だけを、コンベヤーで流れてくる青い箱に詰め替えれば誤出荷の人為的ミスは防げる
[画像のクリックで拡大表示]

 誤った服用が死に至る恐れさえある医薬品だけに、誤出庫をゼロにすることは重要な課題である。だが、小さな製品ばかりが2万品目も棚に並ぶ物流センターで、人為的なミスをゼロにするのは至難の業だった。

 そこで同社は光る無線ICタグに着目した。東京大学の坂村健教授が代表を務めるYRPユビキタス・ネットワーキング研究所(東京都品川区)と共同で、1年半の開発期間と約1億円の費用をかけて、光るICタグを実用化した。

 TBC東京におけるICタグの活用状況はこうだ。まず、出荷すべき医薬品を作業員は手で棚からピックアップしてグレーのかごに入れて、出荷用の青い箱(オリコン=折り畳みコンテナ)がコンベヤーに乗って流れてくるのを待つ。コンベヤーに乗った複数の青い箱が通過する際に、青い箱の情報と、グレーのかごに個別に取り付けられた光るICタグは無線で連動している。青い箱が流れてきた時に、出荷すべき品目を入れたグレーのかごのICタグだけが緑色に光って、どのかごの中身を青い箱に移し替えるべきかを作業員に知らせる。光るICタグは充電しながら何回も利用している。

 TBC東京の新稼働から間もなく効果は表れた。2007年は月次で2月と5月、10月の合計3回、誤出庫ゼロを達成した。2008年に入っても2月に誤出庫ゼロになるなど、安定した実績を残している。