菱食がデータ分析に使うツール「デシルドクター」の画面。来店客データとPOSデータを連動して分析できる
菱食がデータ分析に使うツール「デシルドクター」の画面。来店客データとPOSデータを連動して分析できる
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 食品・酒類卸大手の菱食が、取引先の小売店舗別に客層のライフスタイルを分析して売り場を提案する「生活者起点型マーケティング(R-WAVE)」に2008年4月から本格的に取り組み始めた。

 この活動は、小売店がPOS(販売時点情報管理)データとポイントカードなどから得られる来店客のプロフィールと購買データを網羅的に蓄積していることが前提。このデータを菱食は小売店本部と共同で分析し、店舗ごとに客層のライフスタイルを明らかにする。

 具体的には、商品ごとに「安全」「価格」「時間節約」「品質」といった“選ばれ方”を定義し、商品カテゴリー別にどんな好みで買われているのか、購入パターンを分析する。例えば、「菓子は『安全』を重視して高めの商品を買うが、酒類は『価格』を重視する人(=子供が口にする物にはこだわるが、父親用の酒はとにかく安い物を買う)」といった購入パターンが考えられるが、そうした中でどのパターンの客が多いのかを店舗ごとに分析する。これを基にして、酒類の棚には“第3のビール”の品揃えを手厚くするなどの提案をする。

2009年以降に拡大を図る

菱食の原正浩・次世代事業推進本部R-プランニング部長
菱食の原正浩・次世代事業推進本部R-プランニング部長

 同社は2006年からこうした来店客分析手法を山梨県を中心に出店するオギノ(甲府市)と共同で研究してきた(※)。その後、神奈川県を中心に出店する相鉄ローゼンとも共同研究を開始。菱食はこの研究や適用店舗の拡大を担当する組織として2008年4月に次世代事業推進本部R-プランニング部を新設した。菱食は2008年度中は実証実験を進めてノウハウを確立した後に、2009年以降はオギノや相鉄ローゼンと競合しない、他地域の地場スーパーチェーンにもノウハウを横展開していく考えだ。

 R-プランニング部の原正浩部長は「単純にPOSデータで売れ筋・死に筋を分析したり、国勢調査などの年齢・所得データと重ね合わせて商圏分析するだけでは、効果的な分析はもはや難しい」と来店客のライフスタイル分析に取り組む意義を説明している。

(※):オギノの売り場・販促改革の事例は『日経情報ストラテジー』(6月29日発売)で詳しく紹介する予定です。