宅配ピザ「ドミノ・ピザ」を運営するヒガ・インダストリーズの店舗
宅配ピザ「ドミノ・ピザ」を運営するヒガ・インダストリーズの店舗

 宅配ピザの「ドミノ・ピザ」を運営するヒガ・インダストリーズ(東京都千代田区)で、インターネット経由のピザ注文が急増している。2008年春までに既に注文全体の30%がパソコンまたは携帯電話を使ったネット注文になっており、日によっては35%に達することもある。ドミノ・ピザではもはや、ピザを頼む人の3人に1人はネット注文ということである。「宅配(出前)=電話注文」という常識は、過去のものになりつつあるようだ。

 このままのペースでいけば、「今年度(2009年3月期)中には全体の40%に届きそうな勢い。ネット注文の開始当初に想定していた20%の2倍の水準に達しそうだ」(岩崎雅也・マーケティング部広告販促グループスーパーバイザー)。

 ヒガ・インダストリーズは2004年6月にパソコンからのピザ注文受け付けを開始。約1年前の2007年6月には、携帯電話のホームページからも注文できるようにした。この時点でネット注文の目標を全体の30%に設定していたが、今春でクリアしたことになる。現在の注文構成は21%がパソコンで、9~10%が携帯電話のページ、残りの約70%が従来からの電話になっている。過去1年に注目すると、携帯電話のページからの注文が、ネット注文の割合を9~10ポイント引き上げたことになる。

 ネット注文の割合が増えることは、顧客にも店舗にもメリットがある。単純に考えれば、これまでに比べて注文の電話件数が30%分は減ったわけで、それだけ電話がつながりやすくなる。ドミノ・ピザの場合、1店舗に注文受け付けの電話が標準で4回線用意されているが、その日の混雑状況によっては電話が4つともふさがってしまい、「話し中」になってしまうことがあった。これでは顧客は注文をできず、ほかの宅配チェーンに流れてしまう確率が高い。

 店舗ではピザを作る人や配達をする人が電話対応を兼務しており、電話件数が減れば、その対応時間分をピザ作りや配達に使えるようにもなる。「電話件数が減っても店舗の人件費はすぐには変わらないので直接的なコスト削減効果を見込めるわけではないが、ネット注文では商品価格を5%割引していることを差し引いても売り上げ増には十分寄与している」(岩崎スーパーバイザー)。

ネット注文でも混雑状況が分かるから安心

 ドミノ・ピザがほかの宅配ピザ業者と比較してネット注文で先行できたのは、2004年3月に店舗システムを全面刷新していたことが大きい。この時、既に競合他社との差異化としてネット注文の開始を前提に店舗システムを開発しており、そのおかげで3カ月後にはネット注文機能を追加するだけでサービスを開始できた。

 ネット注文機能は刷新した店舗システムとリアルタイムに近い状態で連動している。全181店の混雑状況を3分ごとに更新することでネット注文画面に表示できるようにしている。そのため、顧客が自宅の住所を入力すれば、最寄りの店舗からの配達時間がその場で分かる。岩崎スーパーバイザーは「宅配ピザは注文から30分以内に商品をお届けするという顧客との約束の上にサービスが成り立っている。ネット注文でも電話と同じように混雑状況が分かることが大前提になる」と明かす。

 ネット注文の実績を重ねてきたことで、ネット注文の顧客動向には地域性が見られることも分かってきた。全国規模で見ると、関西よりも関東のほうがネット注文の割合が高く、中でも割合が高いのは神奈川県の川崎エリアだという。ドミノ・ピザの場合、川崎地区には新旧の複数店舗があるが、どの店舗でも共通してネット注文の割合が高い。このエリアには宅配ピザのターゲットになる可処分所得比率の高いファミリー層が多く住んでいることや、ブロードバンドの普及率が高いことなどが背景にあると考えられるという。