各国の特許証明書(欧州のものは未受領)と、今回の特許取得を担当した文書法務部法務グループの高野紘子氏
各国の特許証明書(欧州のものは未受領)と、今回の特許取得を担当した文書法務部法務グループの高野紘子氏。「今回の事例を通して、社内の知財に対する意識を喚起したい」(高野氏)と話す

 損害保険ジャパンは2008年5月中に、独自開発の「損害分析システム(ダメージ・プロッティング・システム)」に関連するビジネスモデル特許で「国際特許()」を取得する。実効性のある国際特許の取得には、日本・米国・欧州それぞれでの特許登録が必要。2000年に各地で出願して2006年までに日本と米国では特許を取得し、残る欧州特許庁からも2008年3月に特許の承認通知書を受領した。欧米の国際特許取得は製造業などでは一般的だが、金融機関では珍しく、日本の損保業界では初という。

「国際特許」という言葉を同社は海外で取得した特許全般に用いるが、ビジネス戦略上有効な国際特許とは日本・米国・欧州の3極で特許が成立したものだと考えている。

 損害分析システムは、自動車メーカーなど法人顧客向けに、損害保険の付加価値サービスを提供する仕組みとして開発したもの。貨物を大量輸送する過程で表面損傷などの事故が発生した際に、損傷部位を入力(プロット)することで原因を分析し再発防止に役立てることができる(関連記事)。「法人向けの損保商品では、海外の保険会社との競合が激しく、こうした付加価値サービスが商談の決め手になるケースが増えている」(企業サービスセンター部の松本邦康・部長)。それだけに、同システムで国際特許を取得し、海外で特許侵害訴訟を起こされるリスクを防いだ意義は大きい。

 同システムは、現在、損保ジャパンの顧客である大手自動車メーカー2社が世界各国の輸送拠点で、損傷の未然防止や改善策検討のために活用している。

「損害分析システム」の画面イメージ。サーバーは日本国内に設置しているが、インターネット経由で世界中どこからでも入力・分析が可能
「損害分析システム」の画面イメージ。サーバーは日本国内に設置しているが、インターネット経由で世界中どこからでも入力・分析が可能
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