2008年5月13日の決算発表会の際に披露した、新素材を採用した
2008年5月13日の決算発表会の際に披露した、新素材を採用した"ジーンズ"のオーダーメイドサービス「VISCOデニムNAVI」のデモンストレーション。等身大のディスプレーに、オーダーメイドしたばかりの商品のリアルなCG画像が表示される
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 総合繊維メーカーのセーレンは2008年7月から、同社直営店舗に「VISCOデニムNAVI」というサービスを導入し、約350億通りのカスタムオーダーによる女性向けジーンズを販売することを明らかにした。東京や名古屋など全国に10店舗ある直営のファッション店「マッシュマニア」に、等身大のディスプレーやパソコンを設置。画面を見ながらナビゲーションにそって、好みのシルエット、色や柄やデザイン、装飾、サイズを顧客に選ぶことで、"自分だけの商品"をリアルなCG(コンピュータ・グラフィックス)画像で合成しながら注文してもらう。商品は注文確定後、約2週間で届く。価格は2万3000円を予定する。

 今回販売するジーンズは、生地にデニム素材ではなく、伸縮性の高い特殊な新素材を採用する。楽な履き心地とスタイルをきれいに見せることを狙う。それでいて、外観は普通のデニム素材のジーンズに見えるように染色することが、同社独自のデジタル染色システム「VISCOTECS(ビスコテックス)」により可能だという。好みに応じて、刺繍などの装飾をリアルに染色することもできる。

 VISCOデニムNAVIで提供するジーンズのシルエットは、ストレート、スキニー、バギー、ブーツカットの4通りで、それぞれハイライズタイプとローライズタイプを選べる。サイズのバリエーションも豊かで、基本サイズは5~15号まであり、65~75cmまで0.5cm刻みで股下の長さを変えられる。

2008年7月から「VISCOデニムNAVI」の装置を導入する予定のセーレンの直営ファッション店「マッシュマニア」。20~30代の女性客が多い
2008年7月から「VISCOデニムNAVI」の装置を導入する予定のセーレンの直営ファッション店「マッシュマニア」。20~30代の女性客が多い
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 同社の直営店事業の年商は現在は10億円強。だが、今回の商品以後も、トップスからボトム、女性向けと男性向け、ドレッシーからカジュアルまで、すべての商品をカスタムオーダーできるようラインナップを増やしていく予定だ。2年後をメドにフルラインの品ぞろえを目指す。川田達男社長は、「そのころには、お客様の全身のサイズを自動測定できる装置を導入し、等身大ディスプレー上でバーチャル試着をできるようにしたい。納期も1週間まで短縮する。ネット上で同様なオーダーが可能にする展開も考えている」と語る。カラープリンターと同様の原理で、長大な無地の生地に1つ1つ異なるデザインやサイズの衣服を"印刷"する同社独自のビスコテックスで「ファッション業界に流通革命を起こせる」(川田社長)と鼻息は荒い。2008年3月期決算で6期連続の増収増益を果たした同社は、国内の自動車シート材市場では最大手。産業材分野で実証済みの改革力を武器に、いよいよ一般消費者向けファッション市場の本格攻略が始まった。