店舗に設置している端末「MSS」。会員カードを挿入すると携帯電話に情報を送信する
店舗に設置している端末「MSS」。会員カードを挿入すると携帯電話に情報を送信する
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 大丸は、同社のカード会員客が来店時に店内端末にカードを挿入すると、試供品やイベント、商品案内などを知らせる「MYDAIMARUメール」を携帯電話に自動送信する仕組みを2008年3月から導入した。約210万人いる同社カード会員のうち、携帯電話のメールアドレスを登録している約12万人が対象になる。年齢層や各売り場での購買履歴をベースに顧客を18に区分したうえで、購買意欲を喚起できる内容を送信する。同システムの導入を指揮した営業本部の梅村謙一郎マネジャーは「自宅にメールを送るより、来店時にすぐ販促メールを受け取ったほうが購買意欲は沸きやすいはず。リピーターの客単価向上につなげたい」と話す。

 同社では10年以上前から店舗入口などにMMS(マルチメディアステーション)と呼ぶ端末を設置しており、会員カードを挿入すると「来店ポイント」を付与することになっている。だが、ポイントにより来店動機を喚起できても、必ずしも実際の購買意欲の喚起に結び付いていない課題があった。そこで、来店ポイントを付与すると5分以内に顧客が持つ携帯電話へ電子メールを送信することにした。

 送信内容は、当初は全店で18パターンに固定している。だが、システム的には、購買履歴に応じて、1人ひとり内容を変えるようなワン・ツー・ワンの運用も可能だという。各店舗にいるMMS担当者が徐々に、より詳細な独自のパターンを増やすようにしていく。例えば、最近、ジャケットの購入履歴がある顧客が来店したら、シャツの入荷案内を送るパターンを作るなどが考えられるという。

メールのサンプル
メールのサンプル
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 ただし、迷惑メールと認識されないように仕組みも工夫している。ららぽーと横浜店といった生鮮食品に特化した店舗では顧客が毎日のように来店する可能性がある。端末にカードを挿入するたびに同じメールを受取っては迷惑となりかねない。そこでカードを毎日挿入しても、同じ内容の情報は配信されないようにした。

 また配信する際には、数量を限定したり時間を限定したりできる。例えば化粧品の試供品を提供したい場合、先着100人といった用意した数量だけ配信することが可能になる。時間指定で、昼食時だけ弁当の割引券を配信するといったこともできる。

 同社はJ.フロント リテイリングを持ち株会社として2007年に松坂屋各店と統合した。松坂屋でも2008年9月に予定しているシステム統合を完了後、同様のサービスを展開していく予定だ。