ソニー・ミュージックジャパン インターナショナルの後藤達也・第1企画制作グループマーケティング2部チーフプロデューサー
ソニー・ミュージックジャパン インターナショナルの後藤達也・第1企画制作グループマーケティング2部チーフプロデューサー

 ソニー・ミュージックジャパン インターナショナル(東京・千代田区)はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用して集めた顧客の声を基に音楽CD「MAX-mixi selection」を制作、2月20日に発売した。

 同社は2007年9月、国内最大手のSNSであるミクシィ内に公認コミュニティーを開設。海外アーチストの楽曲の人気アンケートを同年11月まで実施し、上位に入った曲を収録したCDを作成した。

 今回の企画に当たって事前に決めたのは、人気アーチストの楽曲を中心に1980年~90年代を代表する曲を収録することと、商品開発のスケジュール程度。コミュニティーの管理人を務めた後藤達也・第1企画制作グループマーケティング2部チーフプロデューサーは「コミュニティーの参加者の反応を見ながら、柔軟に対応していこうと考えていた」と、当時の思惑を振り返る。

 ところが、その思惑はいきなり見直しを迫られた。「初めのうちは思ったよりも掲示板にコメントを書き込んでもらえなかった」(後藤氏)のだ。後藤氏は盛り上がりを見せるほかのコミュニティーを参考にしながら、徐々にコツを習得していった。

 例えば、コミュニティー参加者のコメントを定期的に読んでいる姿勢を見せながらも、後藤氏自身は書き込みを数行に抑え、場の流れを止めないことを意識した。「私が張り切って膨大なコメントを書き込むと、コミュニティーの参加者たちはかえって書き込みしづらくなる」(後藤氏)と気づいたからだ。アンケート期間中も、票数の伸びを実況中継するコメントを適宜入れるなど、場の盛り上げに腐心した。この時期、後藤氏はほかの業務も兼任していたが、休日も含め大半の時間をコミュニティー運営に割いたという。その苦労が実り、約1300人の参加者から2854票を集めた。

発売した「MAX-mixi selection」
発売した「MAX-mixi selection」
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 こうして顧客の声を引き出すことには一定の成果を上げた同社だが、実はその後がさらに大変だった。楽曲をCDに収録する許諾を海外のアーチストに申請したにもかかわらず、一部のアーチストからなかなか返事が来なかったからだ。「商品開発に巻き込んだのに、発売できませんでしたでは顧客に申し訳ない」(後藤氏)。最終的に一部のアーチストの曲は収録できなかったものの、何とか16曲分の許諾が下りたことで、2月発売に間に合わせた。

 目標の売り上げ枚数は3万枚。発売から2カ月経過し、約2万枚を売り上げた。同種のCDに比べるとやや少なめの目標だが、「今回はテレビなどで積極的に宣伝することを控え、SNSの口コミ力でどれだけ売れるのかをテストしたい」(後藤氏)と考えた。「商品の発売後、SNSのコミュニティーの参加者に喜びの声を書き込んでいただいた時には、作ったかいがあったと実感した」(後藤氏)と、開発担当者が商品を作る喜びを再確認できる場にもなったようだ。