英会話教室のGaba(ガバ)が、統計解析手法を用いてインターネット広告の費用対効果を高める「LPO(ランディングページ最適化)」に取り組み、成果を上げている。

 LPOとは、ウェブサイトの売り上げや会員登録を増やす手法の1つ。検索エンジン経由で訪れる人に対して、検索キーワードによって異なる最適なランディングページ(=検索エンジンから自社ウェブサイトに来た人が最初に見る“着陸”先のページ)を表示することで、見込み客の興味をより引きつけられるようにするものだ。Gabaは2007年からLPOに取り組み始めた。2008年春ごろまでに、一般には5%前後とされる資料請求(無料体験)の申し込み率を1~2ポイント向上させ、入会してもらうための1人当たりの費用(獲得単価)も大幅に削減したという。

 こうした取り組みが功を奏し、Gabaは、同業のNOVAの経営破たんで逆風が吹く業界にあって成長を続け、2007年12月期の売上高は前年比14.6%の増収を確保した。マンツーマンを特徴とした独自のレッスン方式に加え、インターネットを軸に的を絞ったマーケティング戦略が奏功している。

「英会話 上達」で検索してくる見込み客を重視

Gabaマーケティング部門オンライン課の山根豪太マネージャー
Gabaマーケティング部門オンライン課の山根豪太マネージャー

 Gabaはマス広告とは異なった、効果的な広告の出し方をかねてから追求してきた。「当社は教室数がまだ少ないため、不特定多数のお客様を対象にした広告は意味がない」(マーケティング部門オンライン課の山根豪太マネージャー)。Gabaの教室は37カ所で、東京や大阪などの大都市部に集中しているからだ。そこで、教室沿線の列車内広告で「Gaba」ブランドイメージを認知してもらい、ウェブサイトで詳細を知ってもらう広告戦略を採る。列車内広告では価格など詳しい情報は載せず、ウェブへの誘導のみを行う。

 ウェブ広告の効果測定にも熱心に取り組んでいる。単純なバナー広告は控え、検索エンジンを使ったキーワード広告や、自社サイトの検索エンジン最適化(SEO)に予算を集中投下している。「英会話が上達するには継続していただく必要がある。検索キーワードを通じてお客様の自発的な意志をとらえることが重要だ」(山根マネージャー)という。例えば、グーグル(Google)の検索型広告を利用しており、「英会話」というキーワードで検索すると、Gabaのウェブサイトへのリンクが最上部に表示される。トップページではなく、「資料ご請求フォーム」に直接誘導し、申し込み率を高めている。

 ただし、「『英会話』という単一のキーワードで検索して訪れる見込み客は当然押さえなければならないとはいえ、漠然とした興味にとどまっている段階の人が多い」(山根マネージャー)。キーワード広告はよく検索される人気キーワードほど1クリック当たりの単価が高く、競争の激しい「英会話」の単価は500~1000円程度にもなるが、クリック後の申し込み率はさほど高くないという。

 そこで、どんな複数のキーワードの組み合わせで検索をかける見込み客を重視するか、Gabaは検討を重ねた。ここがLPOの活用しどころだ。その結論として、Gabaは「英会話 上達」といった複数キーワードで検索する見込み客を重視している。例えば、「英会話 安い」(画面1)で検索した場合と、「英会話 上達」(画面2)で検索した場合では、画面2のほうが「無料体験レッスン」を強調した形で表示される。一見するとほぼ同じ画面だが、画面2のほうが、「無料」をやや強調しているのが分かる。

「英会話 安い」で検索した時のランディングページ   「英会話 上達」で検索した時のランディングページ。「無料」を強調した表示になっている
画面1●「英会話 安い」で検索した時のランディングページ
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  画面2●「英会話 上達」で検索した時のランディングページ。「無料」を強調した表示になっている
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 「安さ」にこだわる見込み客より「上達」にこだわる見込み客に「無料」を強調するのは一見、矛盾しているが、これが同社にとっては正解だった。もともと、Gabaは安さを売りにしてはいない。マンツーマンレッスンを売りにするGabaは、講師1人が多人数を教える一般的な英会話教室に比べればレッスン単価が高めなのだ。このため、「安さ」にこだわる見込み客に資料を送ったり、無料体験レッスンを提供しても、結局は、入会に至る率が低い。「上達」にこだわる見込み客にこそ画面2のように「無料」を強調し、積極的に無料体験レッスンを提供することにした。これが会員の獲得単価の削減に効果を発揮している。

 LPO導入に当たっては、米オファーマティカ(offermatica)社のログ分析ツール(日本国内ではサイバーエージェントが提供)を採用。検索キーワードと、ランディングページのアクセス数や申し込み率の関係を「多変量解析」の数学的手法できめ細かく分析・検証するのにツールを活用している。