リニューアル前の横浜市のトップページ
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2008年1月のリニューアル後のトップページ
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 横浜市がホームページのリニューアルに当たり、架空の顧客像「ペルソナ」を活用しながらデザインを改善することで、市民から好評を得ることに成功した。

 同市は2008年1月、ホームページをリニューアルした。見直したのは60ページほどで、13万ページある同市のサイトのごく一部だが、トップページなど重要なページを中心に取り組んだ。市民の反応は上々で、2008年3月に市民モニター800人に感想をアンケートしたところ、「とても良くなった」と「良くなった」という回答が全体の7割を占めた。

 このリニューアルの成功を陰で支えたのが、3人の"市民ペルソナ"だった。ペルソナとは架空の顧客像のこと。通常、企業が自社のサービスや商品を開発、改善する際に使うマーケティング手法だ。ユーザーがどんな期待を抱いているのかなどを綿密に定量的・定性的に調べて、架空の人物像であるペルソナを作り写真や文章で表現する。今回の場合、消費者ではなく、ホームページに必要な情報を求めてアクセスする市民をペルソナ化した。同市の担当者は、ペルソナの人物像を思い描きつつ作業を進めた。

 同市がホームページのリニューアルを検討し始めたのは2007年春ごろ。前回のリニューアルは2003年1月と古く、「次々に情報を盛り込んでいくうちにトップページの情報がごちゃごちゃしていて分かりにくくなっていた」(広報相談サービス部広報課の川畑栄一氏)。2007年6月には広報課やIT活用推進課、市民情報室、区役所広報相談係、ホームページの広告担当など複数の部署から15人ほどが集まり、サイトリニューアルのプロジェクトが始まった。毎月の会議以外にもメーリングリストを使い、積極的に意見を交わしてきた。

 プロジェクトに協力して、市民ペルソナを作成したのは横浜デジタルアーツ専門学校の教官である浅野智氏と学生たちのグループ(関連記事)。浅野氏らはプロトコル分析やインタビューなどの調査方法で、市民がホームページを使う目的や使い勝手などを調査。調査結果に基づいて、18歳の大学生「井上香織」、42歳の営業職「前田直樹」、67歳無職の「中野稔」という3人の人物像を作り上げた。それぞれには「広島から進学のために横浜市に出て独り暮らしを始めた」「子供が大きくなったので市内のマンションから一戸建てに引っ越したい」「妻と2人で住むために引っ越す予定。近所付き合いが不安」など詳細なプロフィールが設定されている。

 浅野氏らは3人のペルソナをプロジェクトチームに提出。メンバーはペルソナという人物像をユーザーとして具体的に思い描くことで、改善案が出しやすくなったという。「今まではぼんやりとした市民像を頭に描いていたが、より具体的なユーザーのイメージを持てた」と話すのは広報課の川畑氏。新井千秋広報課担当係長は「今回は色調や写真に工夫をすることで横浜らしさも打ち出せた。今後は市政についての更新情報などを配信できるRSS機能(RDFサイト・サマリー)といった仕組みも充実させていきたい」としている。

■変更履歴
当初、第2段落で「30万ページある同市のサイト」としていましたが、正しくは「13万ページ」でした。また第4段落でプロジェクト・メンバーの所属部署名の一つを「区役所広報誌推進係」と表記していましたが「区役所広報相談係」の誤りでした。以上訂正します。 [2008/04/08 21:50]