ミラールームを使ったショック療法

 VOC情報に真摯に向き合い、商品や業務の改善を愚直に繰り返す。そんなVOC経営が軌道に乗るまでには、実は大きな転換点が2度あった。

 最初の転換点はリヴァンプが経営支援を始めた時に実施したグループインタビューだ。幹部とマネジャーに生の声を聞く重要性を知ってもらうべく、数人の消費者グループにミラールームでロッテリアについて自由に語ってもらった。幹部とマネジャーは2日間で計8グループの話を部屋の外から聞いていたが、耳を覆いたくなる発言の連発。「ロッテリアってまだ潰れてなかったの?」という辛辣な言葉まで出てきた。この経験によって、幹部とマネジャーは「自分たちは誇りを持って仕事をしてきたが、市場ニーズと乖離していた」ということに気づいた。

 もう1つの転換点は、リヴァンプから来た篠崎社長や湯浅執行役員などが、VOC情報の使い方を正したことだ。以前は、PDCA(計画・実行・検証・見直し)サイクルの「P」を作成する段階で、VOC情報が企画や数値目標を立てるうえで恣意的な論拠に使われていた。そのため議論が堂々巡りとなり、みんなが疲弊するだけでPDCAサイクルが回らないという事態が目立った。だから、VOC情報は「C」で使うことを意識づけたのである。

 もちろん、戦略や業務を遂行する際、PDCAサイクルのどの部分で重点的にVOC情報を活用するかは、企業の置かれている状況によって異なる。だが、上手に使えばVOC情報がPDCAサイクルを素早く確実に回すための武器となるのは間違いない。

 篠崎社長は「かつての社員は『お客様を100%満足させることは難しい。美味しいと言ってくれても、どこかに不満を持つ人が必ずいる』と最初から弱気な姿勢だったが、今は100%の満足を達成しようと努力する。そのために徹底的にお客様の声を聞いて、細かな改善を積み重ねていく。そうした姿勢が現場(店舗)の士気や自信の向上にもつながっている」と話す。自身の経営方針に確かな手応えを感じている。