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北越パッケージの古屋信和・専務取締役執行役員営業本部長兼トーエーパック事業部統括部長(写真左)と、生産部門でTOCを統括する佐藤和明・執行役員生産技術本部副本部長(写真右)

 北越製紙の子会社で紙加工品を手がける北越パッケージ(東京・千代田区)では、生産部門と営業部門の双方がTOC(制約条件の理論)による業務改善活動に取り組んでいる。TOCとは、全体最適の視点から「根本的な問題(ボトルネック)」となっている部分を探し出し、解決していく業務改革手法。ビジネス書『ザ・ゴール』の著者として知られるイスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット氏が1970年代後半に考案した。

 2005年7月に開始した活動では当初、生産部門を中心に効果を上げてきたが、3年目となる2007年度からは営業部門でも成果が顕著になってきた。従業員1人当たり売上高は2007年度、約3億1000万円と、前年度に比べて10%以上の伸びとなる見込み。TOCの導入は工場など生産部門での業務改革に多く見られるが、営業部門への導入で目に見える成果を上げるケースは珍しい。

 同社はこれまで、取引先ごとにおおよその売り上げ目標を決め、営業担当者たちに取引先への訪問回数を競わせるといった営業活動を展開してきた。だが、各担当者が営業活動中の案件を数多く抱えているにもかかわらず、それが売り上げに直接結び付くまでに時間がかかるという課題を抱えていた。

営業プロセスの細分化によって課題を発見

 TOCの導入後、北越パッケージは見込み客の抽出から受注までの営業プロセスを細分化して、それぞれに進ちょく状況を管理することにした。具体的には次のとおりだ。

(1)見込み客の抽出
(2)顧客への接触
(3)ニーズの把握
(4)企画書の提出
(5)サンプル提出
(6)試作
(7)試作品の評価
(8)見積もり
(9)交渉
(10)受注

 これによって、サンプル提出以降のプロセスがボトルネックになり、営業活動が滞っているという課題が浮かび上がってきた。

 「サンプルを提出した後にもっと積極的に顧客と交渉する、反応が早い顧客を優先する、大量受注につながりやすい案件を最優先して営業するといった対応を取れるようになった」。古屋信和・専務取締役執行役員営業本部長兼トーエーパック事業部統括部長はこう強調する。営業活動が効率化され、売り上げも増加。訪問回数という言葉そのものが、同社の中ではもはや「死語」になったという。

 実は導入1~2年目は、生産部門で着実に成果が上がる一方で、営業部門では目立った効果が見えないために不満が噴出していた。一時は「もう止めるべきではないか」との声が挙がるほどだった。「理屈は分かったが、実際にどのように活動すればいいか、よく分かっていなかったからだ」(古屋専務取締役)という。

 停滞していた状況から抜け出せたのは、活動が3年目に入ってから。営業部門にTOCを適用した経験のある外部のコンサルタントに、プロセス管理などで具体的な指導を受けたことから、軌道に乗り始めたという。「当初はTOCを疑問視していた部長クラスの意識が変わったことが大きい」と古屋専務取締役は振り返る。現在では、顧客を訪問する営業担当者も、常に営業活動の効率化を意識するようになったという。