写真●アメリカン・エキスプレス・インターナショナルの唐澤一彦人事部長 日本・韓国担当
写真●アメリカン・エキスプレス・インターナショナルの唐澤一彦人事部長 日本・韓国担当

 米アメリカンエキスプレス(アメックス)の日本支社であるアメリカン・エキスプレス・インターナショナル(東京・杉並区)は、有能な管理職を戦略的な事業の幹部に抜てきするための新たな人事制度を導入した。

 新人事制度の名称は「9ボックス」。従来は経営層に限って導入していた制度だが、2007年に部課長クラスへ、2008年初めに管理職の末端レベルまで対象を広げた。一般社員への適用は未定である。

 従来は同社の人事異動は原則として社員からの公募によっていた。しかし「有能な社員には、公募を待たずに適切な仕事を任せたかった」(唐澤一彦 日本・韓国地区人事部長)。とは言え、透明性を確保せず、社員本人の意向も考慮せずトップダウンで人事異動を実施すればモチベーションの低下を招きかねない。

 そこで、従来の人事考課システムと併行して、有能な社員を見いだして昇進昇格を早めるための仕組みとして9ボックスを考案した。
 
 9ボックスでは将来性と貢献度の2つの軸ごとに3段階の評価を行い、社員の位置付けを見る。昇進昇格の対象となり得るのは、「将来性と貢献度が共に上位」あるいは「将来性と貢献度の片方が上位でもう片方が中間」の評価を受けた社員だ。

 四半期ごとに評価を実施して、特に有能と判定された社員については、各事業部のトップが集まる評価会議で昇進昇格を検討する。異動させるべきという結論が出た場合には、社員本人にその旨を打診する。部課長クラスを対象に運用した2007年は3人の社員が、部門長などに昇格を果たした。

 今後の課題は評価のフィードバック方法である。現状では、社員に自身の評価をフィードバックしていない。拙速に展開すればかえってやる気を失わせる副作用も懸念しているからだ。「評価者がコーチングの技能を身につけておかないと、昇格対象外になった社員のモチベーションを下げかねない」(唐澤一彦・日本・韓国担当人事部長)。評価者に対するコーチング研修の状況を見ながら、慎重に時期を決める方針である。