カスタマー&コマーシャル本部ベンディングチャネルリーダーシップ戦略企画グループの二宮淳氏。手に持っているのは「1往復オペレーション」のために自動販売機に搭載する装置
カスタマー&コマーシャル本部ベンディングチャネルリーダーシップ戦略企画グループの二宮淳氏。手に持っているのは「1往復オペレーション」のために自動販売機に搭載する装置

 日本コカ・コーラ(東京・渋谷区)が自動販売機の補充作業を効率化する新方式「1往復オペレーション」を開発し2008年2月から導入を開始した。

 従来は、飲料を補充する際にトラックと自販機の間を2回往復する必要があった。トラックで到着するとまず(1)赤外線端末を持って自販機まで向かい在庫状況を見て必要な飲料とその本数を確認し、(2)またトラックに取りに戻って飲料を運んで来る――という段取りだった。

 しかし高層ビルや駅・空港、セキュリティーの厳しいオフィス、業務用駐車場がない場所では、自販機のすぐそばにトラックを停められないため往復に長い時間がかかる。在庫を確認してトラックまで戻る間に飲料が売れて補充すべき本数が変化することさえある。

 今回開発した1往復オペレーション方式では、自販機にNTTドコモのFOMAネットワーク対応通信機能を内蔵してリアルタイムで在庫状況を送信させる。担当者は自販機の在庫状況をトラックの中にいながら確認することができるので売り上げ金の回収と補充が1往復で完了するようになる。

 日本コカ・コーラは自販機のネットワーク化に2002年ごろから取り組んできた。まずサービス面の強化に応用して電子マネー決済や、災害時に遠隔操作で無料で飲料を取り出せる自販機の導入などの機能開発が先行。その半面、売り上げ金の回収や在庫確認、補充といった基本的なオペレーションの効率化は「IT(情報技術)化の流れから取り残されていた」(カスタマー&コマーシャル本部ベンディングチャネルリーダーシップ戦略企画グループのグループマネジャーである二宮淳氏)。

 今回のような仕組みの実現に時間がかかった理由の1つは通信コストの高さ。2002年当時では遠隔管理に必要な通信コストは自販機の売り上げに見合わなかった。だが、この問題は通信料金の引き下げに伴って時間が解決した。

 別な理由としては、資産管理が煩雑になることだった。自販機は、実は撤収したり移動したりと頻繁に置き場所が変わるからだ。設置・移動のたびにIPアドレスも管理しなければならなくなる。そこで、今回のプロジェクトに参加したボトラー4社の担当者や日本コカ・コーラのシステム部門の社員らで毎週電話会議を行い、資産管理などの運用ルールを細かく詰める必要があった。「補充作業を外注せずに、グループ会社のボトラーが直に担当している当社だからこそ今回の仕組みは実現できた」と二宮氏は胸を張る。

 日本コカ・コーラはまず都心部を中心に1往復オペレーションに対応する自販機を設置していく。2008年中に対応機を1万台にまで増やす予定だ。最終的には所有する100万台弱のうち3割程度を対応させることになるだろうと二宮氏は予想している。また、リアルタイムの在庫情報を利用して、補充作業のルートの検討などにも活用したい考えだ。