ハウス食品マーケティング本部香辛食品部の栗本宜長チームマネージャー(写真右)とアイランドの粟飯原理咲社長(写真左)
ハウス食品マーケティング本部香辛食品部の栗本宜長チームマネージャー(写真右)とアイランドの粟飯原理咲社長(写真左)
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 ハウス食品が2008年2月から香辛料の販促活動にブログを活用し始めた。同社が販売する香辛料のブランド「ギャバン」の一般消費者における認知度を100%に高めることを目指す。将来的な売り上げ増も期待している。

 まず、同社の香辛料を使ったレシピを募集。アイランド(東京・品川区)が運営する、料理をテーマにしたブログを統括するポータル(玄関)サイト「レシピブログ」を活用している。同サイトを通じて毎月3種類の香辛料を無償でブロガー(ブログの書き手)100人に配布し、考案したレシピをブログで紹介してもらう。

 このキャンペーンを1年間にわたって展開し、多数のレシピ記事がブロガーに紹介されることで香辛料の認知度・使い方が高まるのを期待する。加えて、ハウス食品は集まったレシピの2次使用権を取得し、レシピ本を作成してネット以外での販促に役立てる方針。

 2007年に香辛料のマーケティング担当に就任したハウス食品マーケティング本部香辛食品部の栗本宜長チームマネージャーは、多種にわたる香辛料の使い方をいかに顧客に伝えればよいかに悩んでいた。ギャバン・ブランドの香辛料は業務用で定評があるものの、家庭での認知度は今ひとつ。認知度を高めるためには宣伝が欠かせないが、カレーやシチューなどと違い、香辛料はテレビCMで完成した料理を見せても商品特性が伝わりにくい。

 販促代理店の担当者と議論を重ねたところ、料理ブログを活用するアイデアが浮上した。「料理ブロガーは、顧客にとって同じ視点で記事を書く身近な存在。ブロガーにレシピを考案してもらえば、記事を読んだ顧客も香辛料を使ってみようという気分になると考えた」(栗本チームマネージャー)。そこで、2008年2月時点で約4800の料理ブログを束ねるレシピブログと組むことにした。

 既に2月に香辛料を配布したところ、約1カ月で300以上のレシピが集まった。栗本チームマネージャーは、「香辛料メーカーが社内で保有するレシピの数は1000程度。短期間でこれほど集まるとは思わなかった」と驚きを隠さない。3月以降は、ブラック・ペッパーなど別の香辛料を配布し、様々な香辛料の認知度を高めていく。

質問で記事の方向性を緩やかにナビゲート

 単にレシピを募集するだけでなく、販促効果を高めるための工夫もいくつか凝らしている。例えば、モニターに香辛料を提供する際に、商品の特徴などについての質問を送って回答を依頼している。「ギャバンの『バジル』『オレガノ』『ローズマリー』のうち、一番気に入ったものと、その理由を教えてください」といった具合である。質問によって記事の方向性を緩やかにナビゲートし、商品の感想を引き出しやすくしている。さらに、「質問に商品名や特徴を盛り込んでおくことで、検索エンジンへの最適化効果も期待できる」(アイランドの粟飯原理咲社長)。

 今後は香辛料以外の商品でもレシピブログでキャンペーンを展開する計画もあるという。ただし、「カレーやシチューなど、季節によって売れ行きが大きく変わる商品では、他のメディアと組み合わせながら活用する可能性が高い」(栗本チームマネージャー)。商品特性によってケース・バイ・ケースで利用する考えだ。