写真1●ほぼ帝人製の素材だけで作ったコンセプトカー「PU_PA」
写真1●ほぼ帝人製の素材だけで作ったコンセプトカー「PU_PA」
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写真2●新幹線N700系車両向けのシート材
写真2●新幹線N700系車両向けのシート材
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写真3●新幹線N700系車両向けの窓
写真3●新幹線N700系車両向けの窓
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写真4●SuicaやPASMOなどのIC乗車券に内蔵しているアンテナとフィルム
写真4●SuicaやPASMOなどのIC乗車券に内蔵しているアンテナとフィルム
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写真5●機器を机上に置くだけで、配線なしで通信機能が使える「2次元通信シート」
写真5●機器を机上に置くだけで、配線なしで通信機能が使える「2次元通信シート」
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写真6●次世代DVDのブルーレイ(手前)とHD DVD。帝人は両陣営に盤面用樹脂や保護フィルムを供給してきた
写真6●次世代DVDのブルーレイ(手前)とHD DVD。帝人は両陣営に盤面用樹脂や保護フィルムを供給してきた
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写真7●テレビ会議システムのスクリーンには、スピーカーの役割も果たす帝人製の特殊な素材を使っている
写真7●テレビ会議システムのスクリーンには、スピーカーの役割も果たす帝人製の特殊な素材を使っている
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 「帝人は、多くのメーカーと取り引きがあるが、既に採用しているもの以外にも様々な素材があることを知ってもらいたい」---。

 こう語るのは「テイジン未来スタジオ」の新井直樹館長。同スタジオは、帝人が2007年11月に東京本社(東京・千代田区)のビル内に開設した、法人向け生産財を主に扱うメーカーとしては珍しいショールーム(220平方m)である。

 帝人はポリエステル繊維から、フィルムや医薬医療まで8つの多様な事業グループを抱えるが、従来は事業別の営業活動が主体。今回ショールームを作った狙いは繊維事業の顧客にフィルムに関する理解を深めてもらうなど、部門横断の販促を強化することだ。来館してもらう客は原則として、帝人グループ企業の顧客企業。2008年1月までの2カ月間で約300社約800人が見学した。

 テイジン未来スタジオの中には、最終製品の分野別に、ふんだんに新素材製品を展示した。

 入り口正面にある「自動車・航空機ゾーン」では、コンセプトカー「PU_PA」を実物大で展示している(写真1)。このコンセプトカーには外装・窓からシートまでほぼすべてに帝人製の樹脂や繊維を使っている。

 ポリエステルのクッション材が使われている新型新幹線車両(N700系)のシート(写真2)や、ポリカーボネート樹脂製の新幹線の窓(写真3)も展示している。

 総2階建ての超大型航空機「エアバスA380」では、内部の梁に帝人製の炭素繊維が使われている。炭素繊維の重さは鋼鉄の5分の1程度。未来スタジオでは、梁の実物を持ち上げて軽さを体感できる。

 「情報・エレクトロニクスゾーン」では、ゲーム機プレイステーション3のきょう体(ポリカーボネート樹脂)や、携帯型ゲーム機ニンテンドーDSのタッチパネルで使われる導電性フィルムなど、身近にある様々な帝人製品が展示されている。IC乗車券のSuica(スイカ)やPASMO(パスモ)も展示しているが、これらの交通用ICカード内部にあるアンテナを包むフィルムは、帝人がほぼ全量を供給している(写真4)。

 一部の事務机メーカーが採用を始めている「2次元通信シート」では、パソコンやカメラなどを机上に置くだけで、配線なしで通信機能が使える(写真5)。

 次世代DVDのブルーレイ(Blu-ray)とHD DVDのディスクを並べて展示しているのも目を引く(写真6)。東芝が2008年2月19日に、HD DVD事業の終了を発表したばかり(関連記事)だが、「帝人はどちら側に行っても大丈夫なように備えてきた」(新井館長)。帝人は両陣営向けに、盤面用樹脂や、ディスクを保護するフィルムを開発・供給してきた。

 こうした展示物を見学中に受けた技術的な質問にもその場で対応できるよう、遠隔地にいる帝人の技術者とその場でテレビ会議を行い、詳細を質問できる設備も用意した。なお、映像を映し出すプロジェクターのスクリーンも、帝人製の特殊素材(写真7、このスクリーンは家電量販店などで市販されている)。

 表面がスピーカーの役割も兼ねるこのスクリーン素材は「音質も良く、カーオーディオ用スピーカーなどに応用することが考えられる」と新井館長は、この場が新たな用途開拓を生むことを期待している。