クボタが海外生産拠点の現場改善活動を担う人材育成を強化している。
 
 同社では、2002年5月に大阪の堺製造所に「5ゲン道場」と呼ぶ改善手法を学ぶ研修機関を開設して、まずは国内各工場から選抜された門下生の人材育成に取り組んできた。

 5ゲン道場の5ゲンとは「現場」「現物」「現実」「原理」「原則」の頭文字である。道場では2週間かけて改善のいろはをたたき込む。

 例えば道場では“価値を生む仕事の時間”と、“無駄な作業時間”を区別して計測することからまず学ぶ。価値を生む仕事の時間を「ファンクションタイム(FT)」、それ以外の無駄な作業の時間を「アイドルタイム(IT)」と同社は定義している。

 道場で門下生は全員がストップウオッチ片手に同じ作業を観察し、FTとITを正しく同じ尺度で測れるようになるまで、計測を繰り返す。こうした実務に加えて座学で考え方も学ぶ。

 道場で2週間学んで自分の持ち場に戻ると、2年以内に生産性3倍を達成しなければ免許は皆伝されない。「抜本的に改革しなければ実現できない相当きつい目標」と、道場主である機械製造本部の桑原功機械TPI推進部長は語る。これまでにのべ626人が道場で学び、27人の師範代が誕生した。

 師範代は国内の所属先事業所のほか、海外の拠点への指導も担当する。建機を製造する枚方製造所にいる3人の師範代がドイツにある製造拠点へ出張もして指導するなどだ。英語のテキストを使いながら、通訳を介しての指導だ。

 さらにここ2~3年は、海外拠点からも研修生を呼んで訓練している。

 主にアジアの拠点がその対象だ。例えば、2005年に中国から5人の研修生が道場に来て学んだ。中国から来た研修生は「分からないところは先生をつかまえてでも理解しようという姿勢が印象的だった。技術的には未熟だが学習意欲の高さに驚いた」(桑原部長)と話す。

 2009年に新工場が稼働する予定のタイからも2008年1月に現地の副社長が来日し、道場に数日間体験入門したり、工場の職長に半日つきっきりでノウハウを教えるなどして幹部から教育を始めたところだ。タイ語版の教科書も作った。新工場の稼動までに改善活動の中心となる担当者の教育に取り組む予定だ。