インターネット広告代理店事業などを手掛けるセプテーニ・ホールディングスの業績が好調だ。2007年9月期は売上高が前年度比23.7%増の258億6300万円、営業利益は同31.9%増の営業利益9億4600万円をだった。ネット広告で競合するサイバーエージェントらを追走する。

 積極的なM&A(企業の合併・買収)の実施もあって同社は14年連続で増収を果たしているが、この成長を陰で支えているのが「ひねらん課」という新規事業立ち上げを専門に行う部門だ。

 同課にはたいていの場合、1人の社員しか所属していない。新規事業を立ち上げたい社員は、上司や役員にかけ合うと、数人の役員を前に事業企画や熱意を訴える場を与えられる。この時点では具体的な企画はなくても構わない。役員との面談で見事に合格すると、ひねらん課への配属を認められ、その社員には「事業開始から6カ月以内に単月の黒字化、1年以内に累積損失の解消」という締め切りが与えられる。最初の6カ月で事業の計画を固めて、次の6カ月で起業に挑む。

 ひねらん課設立のきっかけは、ネット広告事業を手掛けるグループ会社セプテーニの社長であり、ホールディングス専務の佐藤光紀氏が入社3年目の99年に「インターネット分野での新規事業をやらせてほしい」と当時の七村守社長(現・ホールディングス会長)に直訴したことだ。結果的に佐藤専務が取り組んだネット広告の代理店事業はその後中核事業に育った。

入社3年目で新事業立ち上げに立候補

25歳の若さでクチコミマーケティングの会社経営に携わっている東明弘バスマーケティング副社長
25歳の若さでクチコミマーケティングの会社経営に携わっている東明弘バスマーケティング副社長

 以来、5人の社員がひねらん課に配属されてきた。2007年4月にセプテーニ・ホールディングスとアライドアーキテクツ(東京・渋谷区)が共同で立ち上げたバズマーケティング(東京・新宿区)の東明宏副社長もその1人。2004年4月に新卒でセプテーニに入社した東氏はまだ25歳。内定が出ていた大学在籍時から営業担当者として経験を積んできた。2006年ごろにCGM(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)の盛り上がりを見て、「このままではエージェンシーがいらなくなる日が来る」と既存のビジネスモデルに危機感を覚え、具体的なプランはないままひねらん課に立候補。2006年10月に同課に配属された。

 「最初の1カ月半はとにかく人に会いまくった」と東副社長は振り返る。その間に知り合ったアライドアーキテクツとともに、ブロガーの記事を自動的に起業のサイトに取り込む「クチコミedita」というシステムの販売にこぎつけた。東副社長は「大きな仕事を任せてもらうことで成長できる。新規事業はやりたかったけど、経営までやることになるとは思ってもみなかった」と話す。

 さらにセプテーニ・ホールディングスはBLP(ビジネス・リーダーシップ・プログラム)と呼ばれる幹部育成制度を持っている。起業研修を手掛けるグロービスらとともに作り上げた。「BLPは育成の場で、ひねらん課は実践の場だ。最近では両方が就職活動中の学生を引き寄せる要素になっている」と人事担当の上野勇常務は話す。

■変更履歴
第3段落で、当初「最初の3カ月で事業の計画を固めて、次の3カ月で起業に挑む」としていましたが、「最初の6カ月で事業の計画を固めて、次の6カ月で起業に挑む」の誤りでした。同じく、当初「6ヵ月以内に単月の黒字化」としていましたが、正確には「事業開始から6カ月以内に単月の黒字化」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2008/02/06 16:50]