ホンダが製作する歩行型ロボットの「ASIMO(アシモ)」が進化を重ねている。2000年の登場以来、走ったり、踊ったりできるようになるなど、年々改良してきたが、2007年12月に発表したアシモの成長点は、自律的に動けるようになったことだ。これまでは操作する担当者が「停止」といった指示を出さなければならなかったが、アシモが自ら考えて動けるようになった。2体のアシモが協力し合って1つの作業をこなせるようになったことも成長した点だ。

 アシモが目指すのは、人間と共存して役立つこと。ただ開発する研究所内の想定環境と実社会では異なる点も多い。実用化に向けた課題点を洗い出すための実証実験として、2体のアシモが2007年12月12日から2008年1月31日まで、東京・青山にあるホンダの本社で“勤務”した。担当した業務は来客の誘導とお茶の配膳。1日2時間稼働し、平均12回、お茶を運ぶなどの業務をこなした。

ICタグで来客を認識
写真1●ICタグで来客を認識
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 記者も実際にアシモに案内してもらうなど、サービスを体験してみた。

 まず来客の誘導は、受付からミーティングテーブルまで案内するものだ。来客の予約時間の数分前になると、アシモは受付前まで移動してくる。あらかじめICタグを取り付けている顧客(写真1)を見つけると、「ようこそ西さま、お席までご案内致します」と話しかけてくる。アシモの目の部分にあるカメラで感知して、こちらに顔を向けて話しかけてくるのが印象的だった。

 今回の改良の開発責任者である本田技術研究所基礎技術研究センターの大津明彦主任研究員は、「人間がサービスをする際には間を置くなどするもの。アシモにも同じような動きをさせて違和感をなくそうとしている」と話す。例えば、おじぎをする際でも、一呼吸置いてから行うなど、人間に近い動きを目指した。

2体のアシモが配膳を連携プレー

 誘導業務の次は、ミーティングテーブルへお茶の配膳だ。来客は専用端末(写真2)からアシモに配膳を依頼する。
アシモに配膳依頼するための端末。1テーブルに運べるのは4つまで   写真2●アシモに配膳依頼するための端末。1テーブルに運べるのは4つまで
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 アシモは給茶はできないため、まず担当者がいる場所まで移動する。移動経路も、自ら最短距離を計算して歩行している。2カ所のミーティングテーブルへ配膳する場合など数量が多い時には、ワゴンを押して運ぶ。もう一体のアシモが応援に駆けつけて、ワゴンからトレイを取り出してもう1つのテーブルへ運ぶといった協調作業ができるようになった(写真3、4)。
ワゴンを押すアシモに、もう一体が応援に駆け付ける   ワゴンを押すアシモに、もう一体が応援に駆け付ける
写真3、4●ワゴンを押すアシモに、もう一体が応援に駆け付ける
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 1月下旬からは、配膳するだけでなく片付けの業務もこなした。(写真5
後片づけにも挑戦した   写真5●後片づけにも挑戦した
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