INAXのショールームで使う電子ペン、携帯電話、専用用紙。ペンで、来店客が選んだ商品を書き込めば、自動的に見積もりが出る
INAXのショールームで使う電子ペン、携帯電話、専用用紙。ペンで、来店客が選んだ商品を書き込めば、自動的に見積もりが出る
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 住生活グループ傘下の建材・住宅設備大手、INAX(愛知県常滑市)は2007年末から順次、全国約60カ所にあるショールームで、新しい見積もり支援システムの導入を進めている。接客時の見積もりに要する時間を短縮し、営業活動の効率化や顧客満足度の向上を狙う。

 ショールームのアドバイザー(接客担当者)に、専用の電子ペンと携帯電話を400セット以上配布した。アドバイザーはこれを持って、キッチンや内外装用素材といった商品を選ぶ来店客に付き添う。気に入った商品が決まれば、その内容を電子ペンで用紙に書き込む。

 電子ペンには「アノト方式」を採用した。ペン先にはインクのほかに超小型カメラが付いており、書き込んだ内容を電子データとして記憶。電子データは無線で携帯電話を経由して、見積もり情報管理システムに転送される。これに沿って、見積書や提案書などをその場で自動的に作成・印刷する仕組みだ。書き込み内容に不備がある場合は、携帯電話にエラーメッセージが表示されるようにしている。

INAX営業本部営業管理部営業情報企画室の垣田賢・室長
INAX営業本部営業管理部営業情報企画室の垣田賢・室長

 少子高齢化の進展で新築住宅の減少が見込まれるため、INAXはリフォーム需要の取り込みに力を入れている。営業本部営業管理部営業情報企画室の垣田賢・室長は、「従来は工務店などの法人顧客と接してきたが、リフォームでは一般消費者との接点が重要になる。ショールームに来られるお客様は工事日が迫っていて購買意欲が高い方が多い。お待たせしないことがいい印象につながる」と話す。従来は20~30分かかっていた見積もりが、新システムは数分で完了する。来店客が集中する休日の混雑緩和にもつながっている。

 当初は、ノートパソコンを使ったシステムを試したが、「バッテリーがすぐに切れるうえに、接客しながらパソコンを操作する不自然さがあった」(垣田室長)。そこで、電子ペンでメモを取りながら接客する方法に行きついたという。見積もり情報管理システムは、既存のものを流用した。電子ペン自体の価格は1本数万円程度だが、「(消耗品である)専用用紙がちょっと高い。今後価格が下がっていくことを期待している」(垣田室長)と話す。