ワイズマート浦安本店の食育イベントの様子
ワイズマート浦安本店の食育イベントの様子
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 千葉県と東京都で35店を運営する年商300億円規模の食品スーパー、ワイズマート(千葉県浦安市)が、「食育」をテーマにした営業戦略に力を入れて成果を挙げつつある。

 1975年から食品スーパー業を手掛ける同社は、90年代半ばから2000年代半ばの約10年間で急成長し店舗数も年商も2倍以上に伸ばした。だが、2004年2月期~2007年2月期の直近3年間の売上高増加率は年平均4%ほどで、成長がやや鈍化していた。

 こうした背景もあって、新たな営業戦略として、食育をテーマにした接客強化やキャンペーンに2007年から取り組み始めた。

 まず2007年3~5月に正社員・パート併せて177人に日本食育コミュニケーション協会が認定する「食育コミュニケーター」という民間資格を取得させた。資格取得に必要な講座は社内で行い、役員や店長までが参加した。

 そして同年6月から店内イベントを開始。毎月19日に本部で考えた献立の試食会などを店頭で行っている。

現場が接客に自信を持ち始めた

 同社は食育に注力することで脱価格競争、CS(顧客満足)向上、ES(従業員満足)向上という"一石三鳥"を狙っている。

 まず1つめの目的は接客強化による価格競争からの脱却。毎月実施する食育キャンペーンで取り上げる商品は値段を下げなくても売れる。実際に、ある商品を特売で198円で売るより、食育キャンペーン期間中に258円で売ったほうがより多く売れるといった成果を挙げてている。

 2つめの目的は地域密着の接客だ。同社は駅前に100~250坪程度の小型店を展開する業態だけに、各店舗の商圏は小さい。近隣住民の満足度を高め続けなければならない。そこで栄養などについての知識を豊富に持って接することで、新たな魅力を打ち立てたいと考えている。

 食育活動の旗振り役である吉野文雄取締役は「実際に食育イベントを通じて従業員も顧客と会話をする機会が増えた。栄養バランスなどの知識を得たことで接客にも自信が深まっている」と胸を張る。接客に手応えを得たことでパート社員たちが自発的にレシピカードやPOPを手作りするなど現場の取り組み機運も高まってきたという。「『いらっしゃいませ』も言えなかったバイトの学生が食育イベントでは嬉々としてマイクを持ってお客様に語りかけたりする」と吉野取締役はうれしそうに話す。

 3つめの目的は、売り場間の壁を取り除き店舗の一体感を高めることだ。食育イベントでは異なる売り場の従業員同士が自然と協力し合うようになる。イベントで取り上げる献立は、肉や野菜、グロッサリー、調味料と様々だからだ。

 食育イベントの効果は、ポイントカードの購買履歴で検証もしている。同社は「ワイズカード」を40万枚以上発行しており、食育イベントと売り上げの関連や、イベントにおける併売率は本当に高かったのか、といったことを調べて次のイベントに生かしている。