三越の湯川宏グループ業務部品質管理担当ゼネラルマネージャー
三越の湯川宏グループ業務部品質管理担当ゼネラルマネージャー

 三越が、食品の原材料の産地情報収集強化に動き始めた。

 まずは2008年正月用のおせち料理の販売に当たって、商品の主要原材料20品目の産地情報を同社のウェブサイトで公開した。

 百貨店各社がおせち料理で公開する品質関連の情報は、賞味期限や原材料の表示にとどまっていることが多く、材料の産地情報まで公開したのは珍しい。

 2007年は品質表示の偽装や中国産野菜の残留農薬の問題など、食品の安全性を脅かす話題が相次いだ。このため同社の食品売り場でも、原材料の産地などの情報を詳しく掲示してほしいと要望する顧客が増えつつあるという。

 こうした意識の高い顧客の要望に応えるため三越は、「産直品を取り扱うお中元やお歳暮などを中心に、原材料の産地情報の情報収集は2008年から大幅に強化する」(湯川宏グループ業務部品質管理担当ゼネラルマネージャー)という。

 従来は、直接に取り引きがない業者に関する情報収集は徹底していなかった。例えば、秋田県の比内地鶏使用をうたった偽装表示が話題になった時にも、比内地鶏が原材料に使われた食品がどれだけあるのかすぐにはわからなかったという。「原則として直接取り引きがある業者の製造現場には出向いて原材料の産地確認はしていたが、行ききれないところもあった」(湯川マネージャー)

 輸入品の原材料についても、今後、可能な限り輸入証明書や通関証明書を提示できるよう取引先に要望し直しているという。

自社で細菌検査を実施し万が一の問い合わせにも備える

2007年12月、ウェブサイトに公開したおせち料理の原材料の情報
2007年12月、ウェブサイトに公開したおせち料理の原材料の情報
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした取り組み強化の姿勢を顧客に示すために、まず2007年末に三越が扱う商品の1つである高級おせち料理の主要原材料をウェブサイトに公開した。

 「三越特製 姫おせち 和洋三段」という商品を例に取ると、牛肉はオーストラリア産、豚肉は国産、レンコンは中国産をそれぞれ使用していることなどが確認できる。

 さらに同社は、顧客におせち料理を発送すると同時に、自社で管轄する検査室で細菌検査を2007年12月31日に実施した。その検査結果を2008年1月2日に把握して、顧客からの問い合わせなどに応じられる体制を敷いた。湯川ゼネラルマネージャーは、「正月は外部の検査機関は休暇中だが、当社は自社で検査室を保有しているからこうした体制ができる」と胸を張る。

 原材料の産地情報の開示は、物産展の開催時や、2008年7月の中元用商品など、今後さらに対象を広げていく方針である。経営統合を予定している伊勢丹とも既に情報収集のあり方について話し合いを始めているという。