お客様や同僚への応対が優れていた行員を行員同士の投票で選ぶ「エクセレントサービスキャンペーン」での表彰式の様子
お客様や同僚への応対が優れていた行員を行員同士の投票で選ぶ「エクセレントサービスキャンペーン」での表彰式の様子。竹山正頭取が賞状を直接手渡した。

 地方銀行大手の千葉銀行は2007年度から、行員同士による優秀行員投票制度「エクセレントサービスキャンペーン」を導入した。支店や出張所など約170店の営業拠点を対象に、お客様や同僚に対して普段から最も素晴らしい応対をしていると思われる行員を拠点ごとの投票で決める。行員同士が讃え合う風土を醸成するとともに、同僚や自身の応対ぶりを見つめ直す機会を設けることによって、従業員満足度(ES)ひいては顧客満足度(CS)を向上させる狙いだ。すでに2回、投票を実施して上々の手応えを得ている。

 2007年度のエクセレントサービスキャンペーンは2007年5月と8月に実施。第1回目は、5月中旬の2週間に営業拠点ごとに行員同士が投票し、最多得票者を決めた。さらに6月20日、約170人の最多得票者を集めて表彰式を開催した。式には、制度の主旨に感銘した竹山正頭取が出席し、出席者全員に賞状を手渡した。営業畑を中心にキャリアを積んだ竹山頭取は、CS向上こそが営業地域の制約が大きい地方銀行が生き残る重要な施策と痛感している。

 頭取から表彰状を手渡された行員の中には、感激と戸惑いが入り交じる人が少なくなかったという。営業拠点だけで4000人近い行員を抱える巨大な千葉銀行では、頭取と若い社員の間の精神的な距離が近くはないからだ。しかしだからこそ、「モチベーションとCS経営の質を高める意味で頭取の参画には大きな意義があった」と、同キャンペーンを企画した営業企画部統括グループの井岡哲也マネージャーは説明する。

上司より同僚に褒められるほうが士気が高まる

千葉銀行の営業企画部統括グループでCS(顧客満足度)推進を担う里見加寿代マネージャー(左)と井岡哲也マネージャー
千葉銀行の営業企画部統括グループでCS(顧客満足度)推進を担う里見加寿代マネージャー(左)と井岡哲也マネージャー

 千葉銀行のこの取り組みでは、若手のひたむきさにベテランが刺激を受けるという好循環も見られた。「投票後に調査してみたら、自分よりも若い人ががんばっている姿を見ると刺激になる、という意見が多かった」と、営業企画部統括グループの里見加寿代マネージャーは笑みを浮かべる。

 例えば、優秀社員に選ばれた千葉市内の某支店の新入社員に対しては、「新人ながらもロビーでのはきはきした言動は、お客様に感動を与えるとともに、自分に改めて新人のころの気持ちを思い起こさせてくれます」という推薦文があった。受賞者本人は表彰後、「まさか自分が受賞すると思いませんでしたので、うれしいのと同時に驚いています」と答えたという。

 そのほか、「目の不自由なお客様が来店された時、ロビーに出ていって自分の腕をつかんでもらいながら一緒に歩いてカウンターに案内していました。機転の利いた行動で素晴らしかった」と身障者への心配りを評価されるといった現場視点ならではの優秀社員が多く選出された。

 実は里見マネージャーと井岡マネージャーらCS推進チームは当初は一抹の不安を感じていて、2007年の2回で終わってしまう可能性があると考えていた。制度に「キャンペーン」という名称を付けたのは、そんな事情からだ。「日常業務で忙しいのに投票なんて面倒くさい、という批判の声が出てくるかもしれないと思った。ふたを開けてみると、仲間の良いところを探すのはいいね、という声が大半だった」(井岡マネージャー)

 ただし、来年度以降は優秀行員投票の実施頻度を下げる可能性も検討中という。「このキャンペーンは、CSを高めるには従業員満足度を高めることが重要で、上司よりも同僚に褒められるほうがモチベーションが高まると考えて導入した。しかし、様々な形で新たな刺激を与え続けていかないとCS活動は鈍化しやすい。だから投票をずっと続けるべきかどうかは、そのつど判断していく」と井岡マネージャーは説明する。