富士通はこのほど、同社が今年夏ごろから子供向けのサイト用に作成してきた架空の顧客像「ペルソナ」をホームーページ上で公開した。

 ペルソナとは、アンケートや統計といった定量的な調査とインタビューや観察といった定性的な調査から得るデータを基に作り上げる、架空の人物像を指す。ペルソナを意識しながらマーケティングに取り組むことで商品やサービスの顧客満足度が上がったり、営業や生産といった異なる部門の社員同士が顧客像を共有しやすくなったりといった効果がある。

 富士通は子供向けの広報活動にペルソナを活用してきたが、活用中の企業が、ペルソナを社外に公開することは極めて珍しい(過去記事)。自社のマーケティング戦略の根幹が明らかになるからだ。

富士通の子供向けサイト   富士通の子供向けサイト
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 ただし同社の場合は、3つのペルソナがキッズサイトを構築するために作られたものであり、パソコンやサーバといった本業の顧客像ではない。そのためターゲットにしている顧客像を公開しても問題はなさそうだ。コーポレートブランド室の高橋宏祐担当部長は「子供向けユニバーサルデザインの普及に貢献したい」と公開の狙いを説明する。

 公開されたペルソナのハンドブックは、導入を検討している企業が最初に陥る「ペルソナとはどういったものか」「どのように作るのか」「どうやって使うのか」といった疑問に対する回答になり得るだろう。

 ペルソナを利用したマーケティングは注目が集まっているものの、まだまだお手本にすべき事例は多くない。高橋担当部長は「ペルソナはサイトのデザインだけではなく、製品やサービスの開発にも有効」と話す。同社でペルソナ構築を手がけた富士通デザイン(川崎市)は今年8月に分社化している。今後はクライアントからの要望があれば、ペルソナを使ったデザインコンサルティングに踏み込む可能性もあるという。